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日本大学病院

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ニュースレター

2024年1月号

心房細動に対する外科的治療

日本大学病院 循環器病センターの横山勝章です。

今回は心房細動に対する外科的治療についてお話しいたします。

心房細動は、全身性血栓塞栓症とりわけ脳卒中の発症による生命予後の悪化や、心不全の発症、動悸症状によるQOLの低下、認知症や筋力低下、フレイル発症の要因となります。

心房細動にともなう全身血栓症予防として抗凝固薬内服が有効であり、現在は直接経口抗凝固薬(DOAC)が主に使用されています。高齢化や心不全症例の増加にともない脳梗塞などの血栓症発症の高リスク症例が増えた結果、抗凝固薬内服による出血性合併症も増加しています。特に心臓疾患を有する患者さんが消化管出血を発症した場合、1年以内の死亡率が増加することが知られています。

心房細動症例のうち75歳以上の高齢者や心不全の併発、脳梗塞の既往を有する症例では永続的な抗凝固療法が必要となり、心房細動治療の第一選択であるカテーテルアブレーション施行後も同様と考えられています。

実際の臨床において、このような抗凝固薬内服が必須の方が消化管出血を繰り返し、入退院を余儀なく強いられる場面をしばしば見受けられます。抗凝固薬の中止にともなう血栓症発症のリスクと消化管出血治療という半ば相反する診療において、判断に困ることも稀ではありません。

心房細動症例の心原性血栓塞栓は左心房の特に左心耳という袋状部分に発生し、それが心臓外に排出されたのち他臓器へ塞栓となり発症します。

そこで近年は外科的な左心耳切除と心房細動アブレーションが注目されています。

当院の心臓血管外科において、2023年より胸腔鏡下左心耳切除術・肺静脈隔離術を開始しました。胸腔鏡下左心耳切除術とは、心房細動の患者において、血栓が形成されやすい左心耳という部位を切除する手術です。この手術は、一般的な開胸手術と比べて、傷が小さく、回復が早く、合併症が少ないという利点があります。手術の方法は、胸壁に数か所の小さな穴を開けて、そこからカメラや器具を挿入し、左心耳を切除するというものです。

同時に双極高周波通電器具を挿入し、心臓の外側から左右の肺静脈を挟み焼灼する外科的肺静脈電気的隔離術を行います。

この治療のメリットは、血栓の発生部位である左心耳を切除することにより、出血性合併症をきたしてしまう症例において抗凝固薬を休止できる可能性があるという点です。

適応となる心房細動症例は、⑴抗凝固薬で消化管出血をきたすなど副作用のリスクが高く内服困難である、⑵左心耳に器質化した血栓が消失せずカテーテルアブレーションが施行できない、⑶抗凝固薬を内服していても脳梗塞を繰り返す、等の患者さんです。

患者さんが適応になるかの判断を含め、術前検査を行いご説明いたします。循環器内科 横山勝章(月曜日午後 金曜日午前・午後)または心臓血管外科 田岡 誠医師(水曜日 午後)の外来までご紹介ください。今後ともお気軽にご相談いただけますよう宜しくお願い申し上げます。

循環器病センター

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