心臓血管外科
2023年7月から水曜日に心不全外来を開設しました。
近年、心不全の薬物治療はARNIとSGLT2阻害薬の登場によりパラダイムシフトが起きています。ARNI、SGLT2阻害薬、β遮断薬、MRAによる 『Fantastic 4』 が心不全治療の標準治療として確立してきています。日本は超高齢社会の到来とともに心不全患者は急増し、2030年には『心不全パンデミック』が到来するといわれています。このパンデミックは一時的でなく、永続的なものであり、現状にない医療体制づくりを考えていかなければなりません。
私は日本大学医学部附属板橋病院で2015年に多職種による心不全チームをつくり、2018年から大学病院としては初めての試みである心不全外来・看護外来を開設しました。さらに地域医療施設との連携をより一層強化することが重要であり、連携強化のためのツールとして医療版SNSである『Medical Care Station』を大学病院として初めて導入し、現在150名の地域施設の医療従事者と一緒に心不全診療を行っています。地域との連携を強化することで城北地区の20%の心不全患者を診るまでに、都内病院では4番目に多い施設に成長しました。
薬物治療では治療が限界の重症心不全に対して植込み型補助人工心臓を行ってきました。都内で植込み型補助人工心臓を行える施設は日本大学板橋病院を含めて4施設しかありません。当院と日本大学板橋病院が連携することで当院でも重症心不全患者まで治療することができます。また当院の特徴として外来心臓リハビリテーションが行えます。心不全患者は1年以内に約30%が再入院するといわれており、その中で再発予防のための心臓リハビリテーションは重要であり、数多くのエビデンスもあります。地域の医療施設と外来心臓リハビリテーションの連携も行っていき、心不全再発を防ぎたいと考えております。
今回、心不全外来を開設することで、地域の医療施設との連携強化を充実させてまいりたいと思います。入退院を繰り返す心不全、治療抵抗性の心不全だけでなく、軽度な心不全、息切れや下腿浮腫などを認め、心不全かもしれないと思われる患者がおられましたら、気軽に『心不全外来』にご紹介いただければと思います。当外来で診断、治療を行い、治療方針などの情報を共有しながら心不全患者を地域で診ていくことを心不全外来の開設の目標としております。宜しくお願いいたします。