循環器内科の外来医長の谷樹昌です。
いつも貴重な患者様をご紹介いただき感謝申し上げます。
今回は肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)の原因である深部静脈血栓症に関して述べさせていただきます。コロナ感染症が収まったと思いきや、再び、感染者の増加が認められております。私がコロナ禍のなかで外来診療をしていてこの2年あまりに深部静脈血栓症の患者さんを多く診療しました。この疾患は高齢者、あるいは働き盛りの中高年にも起こり得ます。原因はコロナ禍の中での在宅勤務による長時間のデスクワークです。お年寄りに関しては、外出控えによる下肢の運動不足、長時間の座位などが原因になります。片方の足全体やふくらはぎが急に赤黒く腫れあがり、痛みがあらわれます。 数日をかけてゆっくりと進行することもあります。 放置した場合、腫れがつづいて皮膚が茶色く変色したり、崩れて潰瘍となります。このような患者さんが受診したら、直ちに当科へご紹介していただけると幸いです。なぜならば、無治療では死亡率の高い肺血栓塞栓症の原因になるからです。診断は下肢静脈の超音波検査が有用です。更に血液検査のDダイマーが上昇しています。
当院へ受診した際には上記の検査の他に心臓超音波検査、場合によっては胸部造影CTを行い肺血栓塞栓症の合併の有無を調べます。そして診断がつき次第に抗凝固薬の投与を行います。多くの患者さんは外来で診療が可能です。状態が安定したら、紹介していただいた先生にお戻しします。
コロナ感染症は様々な社会的な問題を引き起こしましたが、一方では深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症のような、コロナ禍以前にはさほど頻度が多くなかった疾患の誘引にもなったのです。コロナ感染症は第5類になりましたが、いまだ、外出控えをしている高齢者、あるいは在宅勤務が続いているサラリーマンが多くいます。下肢の浮腫の患者さんは心不全だけだはありませんので注意が必要です。
厚生労働省ホームページより
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170807.html