新薬剤アップデート
常々、貴重な患者様をご紹介いただき誠にありがとうございます。
今回は水曜午後のジストロフィー外来からのお知らせをさせていただきます。
皆さまもご存じかと思いますが、本年7月に遺伝性網膜ジストロフィー初の治療薬としてノバルティス社からルクスターナ®が承認されました。治療費が片眼4960万円することなど様々話題になっておりますが、今まで適応となる治療法が全くなかったこの領域の疾患に確かな光を与えてくれる治療薬となります。
ただ、今回の対象はあくまでRPE65遺伝子変異のみの治療薬であること、アデノウイルスを用いたゲノムを網膜下に注入する硝子体手術が必要であること、進行を抑制する効果がメインであることに注意が必要とのことです。ただこの技術を応用することで、次の治療薬が創生されると思われますので、注視していきたいと思います。
もう一つアメリカで萎縮型加齢黄斑変性に対する治療薬(Syfovre®サイフォブレ;一般名Pegcetacoplan)が発売になっています。補体系のC3を阻害する薬で、$2,190と高価な硝子体内注射になります。治験では1~2か月に1回注射を打った群と打たなかった群で2年後に約20%程度地図状萎縮の進行を抑制したというものです。合併症として、打った群の方が脈絡膜新生血管の発生が7~12%に対して、打たなかった群で3%と滲出型加齢黄斑変性になりやすいとの報告があります。この治療薬も萎縮型加齢黄斑変性の治療薬としては初めてのものになり、実臨床でどのような運用がされるか日本にも入ってくるのか注視していきたいと思います。
今回は網膜領域の新しい薬についてご紹介させていただきました。
年末に向かい何かとご多忙のことと存じますが、今後共、ご支援ご厚情を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。