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痔核 じかく

痔核

 

 

【内痔核internal hemorrhoid】 


 肛門管に発生する腫脹した粘膜下の血管組織でありその本体は静脈瘤です。歯状線より奥(口側)の粘膜下にある痔静脈叢が静脈瘤様に拡張した状態をいいます。

 

症状)出血、脱出などで、脱出が戻らなくなる嵌頓(かんとん)状態にならなければ痛みははほとんどありません。脱出したものは軟らかく無痛性で圧迫により抵抗なく縮小します。

 

程度分類)  

内痔核の分類には、Goligher(ゴリガー)分類があります。


第Ⅰ度 排便時、静脈鬱血、出血するのみ。脱出なし。

第Ⅱ度 排便時脱出、しかし自然還納する。

第Ⅲ度 排便時脱出、用手還納が必要。

第Ⅳ度 排便時以外でも脱出、完全還納が不能。



 

治療)


1)保存的治療


規則正しい排便習慣、野菜などの高繊維食、高残査食の食事療法が基本です。便秘が起こらないように心がけます。必要に応じて緩下剤の内服(酸化マグネシウムや漢方薬)、出血や嵌頓などの症状を治めるために座薬を用います。痔の種類と程度により座薬を選びます。よく座薬で痔が治るような宣伝を見かけますが、本体の静脈瘤を治すことは出来ません。浮腫や炎症を座薬で治めて症状を軽快させるのです。この保存的治療で内痔核の程度を軽減する事は可能ですが、お酒や便秘や長時間の座っているもしくは立ちっぱなしのお仕事の方はなかなか症状は軽快しません。GoligherⅢ度になると保存的治療で脱出を治すのは困難です。

 

(2)痔核硬化療法(ALTA療法)


 様々な硬化剤がありますがALTA療法(ジオン四段階注射療法)が現在は硬化療法の主流になっているといってよいでしょう。適応はGoligherⅡ度からⅣ度の状態ですが、全周性の静脈瘤や脱出が数年もあり固くなってしまっているとなかなか治癒は難しいのが現状です。しかし、適応は実際に診察をしてからになりますので自己判断は禁物です。硫酸アルミニウム・カリウムとタンニン酸という成分からなる注射剤を脱出を伴う内痔核に注射すると、そこに一種の炎症・線維化と癒着が起こって、痔に流れ込む血液量が減り盛り上がった痔が萎縮・固定されて急速に症状が改善します。ほとんどの方が痛みを感じません。静脈瘤のネットワーク形成に差がありますので、治療の効果は個人があります。


 当科では腰椎麻酔をしっかりかけて、静脈瘤の本当の大きさを確認してから注入量や注入場所を直視下に決めています。というのは排便時は肛門括約筋が緩みそして力んだときに静脈瘤(内痔核)膨らむという排便時の状況と腰椎麻酔をかけた状況が似ているからです。術前の肛門鏡や直腸指診は肛門括約筋が十分に緩んでいない状態での観察ですので、静脈瘤が圧迫されて本来の大きさではない状態なのです。入院期間は術前日入院して術翌日に状態を確認して帰っていただくので、2泊3日になります。ほとんどの方が脱出症状が軽快し、非常に効果のある方はほとんど静脈瘤が消失してしまいます。しかし一方でまれですが、効果がありすぎて潰瘍を作ってしまったり、肛門皮膚が腫脹して肛門痛をおこしたりする方もいます。いずれも一例のみですがこのような合併症を起こす方がいるのも事実です。この方達は幸いに座薬などの投与で軽快しています。逆に効果の少ない方は再脱出を認めます。外傷で下半身不随になった方は重度の便秘のためにジオン注の1週間後に再発してしまいました。また罹患期間十年くらいの長期のⅢ度の方も再脱出の可能性が高まります。


 当科ではまず合併症のお話をした上でほとんどの方が脱出しなくなるので、まずはジオン注を試してみて、もし再脱出をしたならば再度ジオンをするか下記に述べる従来の切って治すという治療方針にしています。一般的なジオンの適応を少し拡大している状況です。というのは少なくともジオンをすれば再脱出してしまう人でも術前よりは出方が少なくなるという実体があるからです。

 

3)手術療法


ⅡからⅣ度の内痔核、嵌頓したことのある痔核で、ジオン注の適応外もしくはジオン注で再発した場合に施行します。原法は高位結紮切除術(Milligan-Morgan法)といって、痔核と手前の皮膚を切除するだけのものです。当科ではこれでは痛みが強いので痔核を切除した粘膜部分は縫合閉鎖して皮膚の一部は開放にする半閉鎖法を行っています。これも当科では腰椎麻酔で行い、排便後に術後出血の無い事を確認し、痛みがある程度コントロールがついてから帰っていただきます。術後の痛みや出血は家に帰られてから不安があるものです。

 

【外痔核 external hemorrhoid】 

                    

 外痔核は歯状線より下方の皮下静脈瘤を示す用語なのですが、外痔核単独で存在する事はあまりありません。ほとんどが内痔核が連続して皮下まで静脈瘤を形成する内外痔核の状態で存在します。血栓性外痔核が外痔核の同義語として用いられることがありますが、これは高度の下痢や便秘、多量の飲酒や長時間の立ち仕事が誘因となって突然皮下静脈に血栓を生じる病態であり、分けて考えなければいけません。

 

症状)


 外痔核はあまり痛みなどの症状はありません。膨らんだ感じがするのみです。血栓性外痔核の場合は急に肛門縁付近に痛みを認め、こりこりしたしこりを触ります。大きいと肛門の半周くらいが浮腫んで強い痛みがあります。ほっておくと皮膚が破けて中から凝血塊が出てくることがあります。

 

治療)

 

 外痔核単独で治療をすることは少なく内外痔核の脱肛状態のときに前記した手術治療が行われます。当初はジオン注は適応外でしたが、内痔核部の治療を行うことで外痔核成分も小さくなる事もあります。血栓性外痔核の治療はまず座薬や消炎鎮痛剤などで対処します。また湯船に浸かって血流をよくしてもらいます。だいたいはこれで軽快するのですが、血栓が大きくなり浮腫が強くなったり、痛みが3〜4日でよくならない場合は局所麻酔下(ちょっと痛いです)に切除を行います。これもしっかりと取らないと痛みが消えないことがあります。血栓がうまくとれれば出血は多少ありますが、皮膚を切っているのにもかかわらず痛みは比較的早く消えます。

 

 ご質問がございましたら、お気軽に当科外来までご相談ください。


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