平素より整形外科センターに患者さまをご紹介いただき,誠にありがとうございます.
ニュースレターの内容は一月ごとに変わりますが,病院のホームページにこれまでに発行したものが掲載されています.整形外科以外の記事もご覧下さい.
今回は,手根管症候群に対する私見です.
非典型例について:ほとんどの手根管症候群は臨床症状のみで容易に診断できますが,中には症状が非典型的であるためにそれと診断されていない場合があります.一番多いのはすべての指にしびれがある場合です.もともと問診ですべての指がしびれると訴える患者さまは多いのですが,実際に感覚障害を調べて見ると小指と環指尺側にはしびれも感覚障害もないことがほとんどです.しかし,小指と環指尺側に本当にしびれと感覚障害があることがあります.その程度は軽く環指の橈側尺側でその違いは明らかで,尺骨神経領域に比べて正中神経領域の障害がメインであることには違いがありません.これは手根管症候群では尺骨管の内圧が同時に高まっているためと理解されています.Tinel様徴候やPhalen testが陰性でも電気生理学的検査をすれば確定診断できますが,この事実を知らないと誤診しかねません.
画像診断について:X線検査は必須であると思います.石灰化による手根管症候群の頻度は低いですが,年に数例は経験します.ご紹介頂いたほとんどの患者さまは外来ECTRですが,石灰化による手根管症候群はOCTRを行っています.超音波検査でもわかりますが,X線検査(手根管撮影)が確実です.
母指対立再建について:手根管症候群重症例で母指対立再建を除圧と同時に行うかどうかは判断に迷うことがあります.まず,重症例でも短母指外転筋のみに高度の萎縮があるにもかかわらず他の母指球筋に萎縮がないため,対立が可能な症例があります.当然このような場合は対立再建の適応はありません.母指の対立障害でお困りの患者さまはつまみ運動で困っていますが,たとえば財布から小銭が取り出しにくい等の障害は運動障害だけでなく,母指と示指中指の感覚障害も大いに関与しています.従って,除圧だけ行いしびれと感覚鈍麻がなくなると,対立障害があってもつまみができるようになることが多々あります.
「ECTRだけ行ってお困りなら後に対立再建を追加しましょう」のICで手術を行った患者さまで,後に対立再建を希望する患者さまが極端に少ないのは,単にもう一度の手術を尻込みしているだけではないのではないかと考えています.