2015年4月から日本大学病院、整形外科の医局長を拝命しました、後藤文聖(ぶんせい)と申します。
昨年9月に駿河台日本大学病院が閉院し、10月に新しく日本大学病院として生まれ変わってから、早1年が過ぎようとしています。病院の「引っ越し」ということに加え、電子カルテの導入をはじめとする様々なシステムの変更などで、慣れないことが多々ある状況から始まり、駆け足で進んできたような日々であり、あっという間の1年間でした。患者様やご紹介頂く先生方にも、ご不便、ご迷惑をおかけすることも多々あったかと思いますが、それもようやく落ち着いてきたように(?)思います。
さて、当院整形外科には、手外科、人工関節、脊椎、スポーツ整形外科と、各専門領域の担当医がおりますが、私はスポーツ整形外科を担当しております。様々なスポーツ外傷を扱っておりますが、今回は中でも代表的な、膝前十字靭帯(anterior cruciate ligament: ACL)損傷について書きたいと思います。
ご存知の通り、ACLは膝関節の中で、大腿骨の後方から、脛骨の前方へ走る大切な靭帯です。主に大腿骨が脛骨に対して前方へ移動しないように、また、捻る方向に動かないように制御しています。もし、この靭帯を損傷すると、膝は前後に、また捻る方向に緩くなることになります。 自覚症状としては『膝がずれる感じ』、『抜けるような感じ』(これを『膝崩れ(giving way)』といいます)があります。よくACL損傷の患者様に『僕の靭帯は完全に切れてますか?部分断裂ですか?』と聞かれますが、私自身は『全部切れてるかどうかよりも、膝崩れがあるかどうかが大切だと思いますよ。』とお答えしています。つまり、膝崩れがある、ということは、ACLが機能していない、ACL不全膝である、ということになります。
ACL不全膝を放置しておくと、スポーツ復帰に支障をきたすばかりでなく、二次的な半月板損傷や軟骨損傷の原因となり、さらには変形性膝関節症(OA)を引き起こすことは広く知られています。治療をすることで、短期的なスポーツ復帰を目指すばかりでなく、長期的なOAをも防止する、というのが我々のゴールと考えています。
昔は比較的侵襲も大きく、若いスポーツ選手など、限られた方に対して行われてきたACL再建術ですが、近年では関節鏡視下手術の技術の進歩や、スポーツ愛好家の年齢層が広がってきていることもあり、その適応は広がってきております。 当院でも、より低侵襲で、高いレベルでのスポーツ復帰、高い患者満足度を目指し、トップレベルのアスリートから、比較的ご高齢のスポーツ愛好家の方まで、幅広く前十字靭帯再建術を行っております。 今後とも日本大学病院整形外科をよろしくお願いします。