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日本大学病院

医療関係者の方へ
ニュースレター

2017年8月号

【 循環器疾患の源流にあるもの 】

心血管疾患、とりわけ冠動脈疾患を代表とする動脈硬化を基盤とした疾患群は脂質異常症、高血圧、糖尿病 および、喫煙などの悪い生活習慣が原因となっております。

今回は、現時点での高尿酸血症と心血管疾患の見解に関して概説します。


高尿酸血症とは、年齢、男女を問わず、血清尿酸値が7.0mg/dL以上と定義されています。食生活の欧米化、メタボリック症候群の増加などにより、高尿酸血症患者は確実に増加しています。成人男性の約25%、30歳以降では約30%に達していることが推定されています。一方、女性では閉経後に血清尿酸値が上昇して、その頻度は50歳未満で1.3%、50歳以降では約4%と報告されています。

当然、高尿酸血症が持続すると痛風関節炎・結節になる可能性が増大します。個人差にもよりますが、血清尿酸値が7.0mg/dL以上で、その値が高くなるほど痛風関節炎の発症リスクは高くなり、高尿酸血症の状態が長期であるほど、痛風結節ができ易くなります。患者さんのQOLを損なう痛風の予防・治療に高尿酸血症の治療は欠かせないのは周知の如くです。

一方、高尿酸血症と心血管イベントとの間の因果関係、あるいは、心血管イベントのリスクマーカーになり得るのか、という議論は以前よりされていますが、未だ一定の見解が得られるエビデンスの蓄積はされていません。例えば高尿酸血症と将来の高血圧発症・高尿酸血症と血液透析リスク・高尿酸血症と冠動脈疾患発症のリスク・高尿酸血症と脳卒中発症など。

しかしながら、これらの多くは後ろ向き集積研究、小規模な観察研究、あるいは前向き縦断研究で多くの交絡因子があり、その結果の解釈には慎重にならざるを得ないものが多いと思われます。下記に記す高尿酸血症・痛風のガイドラインでも高尿酸血症と心血管疾患の関係に関しては限定的な記載になっております。



  1. 血清尿酸値は将来における高血圧発症の独立した予測因子と捉えることは可能である【エビデンス1b/推奨度A】

  2. 最近の一般住民および高血圧患者における観察研究において、血清尿酸値は独立し心血管疾患の危険因子と相関するか否かに関して、相反する報告がされている【エビデンス2/推奨度B】

  3. 観察研究のサブ解析において、生活習慣病治療に伴う血清尿酸値の上昇および低下がそれぞれの心血管イベントの増加および抑制に寄与する可能性が示唆されるが、血清尿酸値の低下が心血管イベントに与える影響を検討したランダム化した比較試験は存在しない【エビデンス2a/推奨度B】

  4. 血清尿酸値は脳卒中の初発ならびに再発リスク、心不全による予後ならびに再入院の予測因子となる可能性がある【エビデンス2a/推奨度B】

    (日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改定委員会編・高尿酸血症・痛風治療のガイドライン 第2版 より)

日本は世界に稀に見ぬ高齢化社会にあり、高齢者人口の増加とともに心血管疾患による死亡率も増加しており、今や全死亡の25%に達しています。心血管疾患のリスク管理が健康寿命を延ばす鍵です。循環器医として、次のターゲットは高尿酸血症と心血管疾患の関係を明らかにすることかもしれません。
日本大学病院の循環器内科は大学病院内に併設された日本総合健診学会認定の優良認定施設としての健診センターの協力のもと循環器疾患の1次予防から2次予防、および救急医療における疾病の連鎖をグローバルに診ることが教室の伝統として継承されています。とりわけ、高齢者は様々な疾病を合併しており、個々の患者さんをその病態に合わせて包括的に治療・管理していくことが重要です。医局員一同、たゆまぬ研鑽のもと真摯な姿勢を持って前向きな姿勢で日常診療にあたっています。
今後ともご指導、ご鞭撻のほど宜しくお願い致します。

循環器病センター

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