【 循環器疾患の源流にあるもの 】
心血管疾患、とりわけ冠動脈疾患を代表とする動脈硬化を基盤とした疾患群は脂質異常症、高血圧、糖尿病 および、喫煙などの悪い生活習慣が原因となっております。
今回は、現時点での高尿酸血症と心血管疾患の見解に関して概説します。
高尿酸血症とは、年齢、男女を問わず、血清尿酸値が7.0mg/dL以上と定義されています。食生活の欧米化、メタボリック症候群の増加などにより、高尿酸血症患者は確実に増加しています。成人男性の約25%、30歳以降では約30%に達していることが推定されています。一方、女性では閉経後に血清尿酸値が上昇して、その頻度は50歳未満で1.3%、50歳以降では約4%と報告されています。
当然、高尿酸血症が持続すると痛風関節炎・結節になる可能性が増大します。個人差にもよりますが、血清尿酸値が7.0mg/dL以上で、その値が高くなるほど痛風関節炎の発症リスクは高くなり、高尿酸血症の状態が長期であるほど、痛風結節ができ易くなります。患者さんのQOLを損なう痛風の予防・治療に高尿酸血症の治療は欠かせないのは周知の如くです。
一方、高尿酸血症と心血管イベントとの間の因果関係、あるいは、心血管イベントのリスクマーカーになり得るのか、という議論は以前よりされていますが、未だ一定の見解が得られるエビデンスの蓄積はされていません。例えば高尿酸血症と将来の高血圧発症・高尿酸血症と血液透析リスク・高尿酸血症と冠動脈疾患発症のリスク・高尿酸血症と脳卒中発症など。
しかしながら、これらの多くは後ろ向き集積研究、小規模な観察研究、あるいは前向き縦断研究で多くの交絡因子があり、その結果の解釈には慎重にならざるを得ないものが多いと思われます。下記に記す高尿酸血症・痛風のガイドラインでも高尿酸血症と心血管疾患の関係に関しては限定的な記載になっております。
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日本は世界に稀に見ぬ高齢化社会にあり、高齢者人口の増加とともに心血管疾患による死亡率も増加しており、今や全死亡の25%に達しています。心血管疾患のリスク管理が健康寿命を延ばす鍵です。循環器医として、次のターゲットは高尿酸血症と心血管疾患の関係を明らかにすることかもしれません。