ここ数年、全国の泌尿器科病院で一世風靡した言葉、それはダビンチであります。平成26年4月から前立腺癌の全摘除術、平成28年11月からは腎癌に対する腎部分切除が保険適用となり機器の導入と人材の育成に余念がない昨今であります。ご存知のように前者の前立腺癌については患者さんの数は増加し、2017年9月国立がん研究センターがん対策研究センター、がん対策情報センターによれば、2013年男性の部位別癌罹患患者数は74861人で、肺癌の75742人に迫る勢いであります。また罹患率でみると10年間でその数は3倍に増加しました。その治療の内訳で見るとDPCの出来高算定病院の治療実績では2015年4月から2016年3月の間に前立腺癌の治療で入院した患者数は155728人ですが、手術件数は21676人でその割合は13.9%に過ぎません。前述したダビンチの手術はすべての手術対象患者が適応にはなりません。手術体位が極端な頭低位となるために,未治療脳動脈瘤閉塞、頸動脈の動脈硬化による狭窄症そして隅角緑内障がある場合は禁忌であります。また直腸癌などの下腹部手術歴のある患者や高度の肥満患者などは,ロボット支援手術が適さない場合があります。残念ながら日本大学病院にはダビンチはありません。しかしダビンチの適応とならない患者について、安全に開腹手術を行える実績があります。さらには術後のPSA再発についても放射線科と連携をとることでスムースに外照射を導入することが可能であります。
また不幸にも病状が進行した場合であっても、化学療法室と連携をとることで外来通院での抗癌剤の治療に移行可能であります。
近年では前立腺癌骨転移に対して今までの内分泌療法に抵抗性を示す患者には、放射性医薬品基準 塩化ラジウム(223Ra)を用いることが放射線科との連携により可能となりました。
前立腺癌の罹患数は増加し前述したようにその数は上昇していますが、累積死亡率でみると男性の癌の全体数が25%なのに対して、前立腺癌のそれはわずか1%に過ぎません。診断から治療まで全人的な治療を行うことで、いわゆる天寿を全うしていただくのが我々泌尿器科の務めと考えております。
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