日本大学病院消化器内科の病棟医長をしております中河原と申します。消化器内科病棟は10階にあり、新宿の高層ビルまでみることができる眺めのよい開放感のある病棟です。42床の病床があり、肝臓、消化管、胆膵疾患に対して臓器別のグループを構成して専門的な治療を行っています。また、近隣の医療機関からの御紹介や救急搬送を積極的に受け入れているため、入院の約4割は緊急入院が占めているのが特徴です。今回は新しい総胆管結石の治療について御紹介させて頂きたいと思います。
巨大バルーンによる巨大積み上げ胆管結石の治療
総胆管結石は感染を伴うと重篤な化膿性胆管炎を併発することがあるため、無症候性であっても原則治療が必要とされています。総胆管結石の治療は、以前は開腹手術を行っていましたが、1974年に内視鏡的乳頭括約筋切開術が開発されたことにより、内視鏡的治療が多くの施設で行われるようになりました。しかし、現在でも内視鏡的治療に伴う出血、穿孔、急性膵炎などの偶発症が多いため、専門医が常勤している基幹病院などを中心に行われています。当院では年間約160件の内視鏡的逆行性胆管膵管造影及び関連処置(結石除去術、ステント留置術など)を行っており、本年度は上半期で約100件の処置をしており増加傾向にあります。
画像1は内視鏡的逆行性胆管造影で、胆管内に大きさ約15mmの結石が積み上げられています(黄矢印)。
画像1 |
このような結石の治療は内視鏡的にファーター乳頭を切開して、バスケットカテーテルで結石を破砕し、採石していきますが、巨大結石ではファーター乳頭からでてこないことや、破砕した結石が遺残することも問題となっていました。
近年、直径20mmまでの巨大バルーン(画像2赤矢印)を用いてファーター乳頭を大きく広げて巨大結石を採石する治療が保険適応になりました。(以前は10mmまでの拡張バルーンを用いて治療していました)
画像2
左上の内視鏡画像は治療前のファーター乳頭です。ガイドワイヤーを胆管内に入れ、右上画像のように巨大バルーンで胆管を拡張します。拡張後は左下画像のように、中がのぞきこめるほど胆管が大きく拡張しますので、巨大結石を容易に取り出すことができます。
巨大バルーンによる総胆管結石の治療が行われるようになってから、治療回数や治療時間も減り、患者負担も軽減されています。総胆管結石の治療は内視鏡的治療が第一選択になってきましたが、術後胃などの胆管挿管困難症例では、消化器外科と連携し、腹腔鏡による胆管結石除去も行っています。総胆管結石以外にも、悪性腫瘍による閉塞性黄疸や胆管炎の治療も行っていますので、お悩みの症例がございましたら、御相談下さい。