スタンフォードA型急性大動脈解離や胸部大動脈瘤破裂などの生命にかかわる重篤な疾患は、何の前兆もなく突然発症します。最近では有名な舞台俳優や声優が突然死し、解剖の結果スタンフォードA型急性大動脈解離に合併した心タンポナーデであると報道されるなど、国民の関心の非常に高い疾患となっております。
東京消防庁の管轄内では、“急性大動脈スーパーネットワーク”が運用されています。
1. 重点施設(13施設) 2. 支援施設(28施設)の2つの病院群に分け、東京消防庁救急隊が収容した急性大動脈疾患患者はまず重点施設への搬送が検討され、重点施設が対応不可能な場合のみ支援施設への搬送が検討されます。重点施設の条件として24時間365日大動脈緊急手術に対応が可能で、しかも優れた手術成績が要求されます。3年間の急性大動脈疾患の救急搬送件数と手術件数、さらにその成績が評価され、急性大動脈スーパーネットワーク協議会で検討され重点施設が決定されます。
当院救命救急センター、循環器病センター、心臓血管外科チームの努力の結果、2016年急性大動脈疾患に対する緊急手術症例が都内加盟施設の第4位に浮上しました。都内の大学病院では第1位になりました。これを受けて日本大学病院は2017年1月1日をもって急性大動脈スーパーネットワーク重点病院の指定を受けることが決定されました。
当院で行っている2つのオリジナル低侵襲大動脈手術LIQR(リカー)法とLIQS(リックス)法は、手術時間を従来の約6-7時間より大幅(1/3)に短縮し(約2時間20分)、術後の入院期間を短くし、また死亡率も低い優れた手術術式として認められ、読売新聞にこの手術法が紹介され、全国から見学者が来るようになり、また出張技術指導も行うようになりました。最近では80歳以上の高齢患者様の紹介が多く、近接3年で61例の80歳以上患者さまの胸部大動脈瘤手術を施行しましたが在院死亡例は皆無でした。最高齢は95歳の女性でしたが、元気に退院されました。さらに腹部大動脈瘤、胸部大動脈瘤に対する低浸襲手術として大動脈ステントグラフト挿入術も積極的に行っています。この術式は鼠径部の数センチの傷で手術が可能で、従来の手術方法より体への負担が大幅に軽減、手術時間も短縮される優れた術式です手術のみならず退院までの患者さんの心のケアにも重点を置き、毎朝6時からの早朝回診もかかさず、真心こもった診療を心がけております。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。