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日本大学病院

医療関係者の方へ
ニュースレター

2017年2月号

日本大学病院消化器内科の草野央(くさのちか)です。

昨年10月より当院に勤務させて頂いております。3ヶ月が経過したばかりですが、消化器内科・消化器外科のスタッフに助けられながら、日々充実した診療ができるようになってきました。患者さまにとって最善の治療を提供できるよう、今後も日々邁進していく覚悟でおります。どうぞ宜しくお願いいたします。

Helicobacter. pyloriと胃がん

1984年,オーストラリアの病理学者WarrenとMarshallがHelicobacter. Pylori (H.Pylori)の分離培養に成功し, H. pyloriと胃粘膜障害の関連が広く知られるようになりました。胃がんは、H. pylori感染に伴った慢性炎症の持続によって遺伝子異常が蓄積されることにより発生すると考えられており、H. pylori感染の関与しない胃がんは数パーセントのみと報告されています。H. pylori除菌による胃がん発生の抑制効果に関して、スナネズミを用いた動物実験では、H. pylori感染後の早い時期に除菌するほど胃がんの抑制効果が高かったことも報告されており、ヒトにおいてもH. pylori感染者は可能な限り早い時期に除菌療法を行うことが胃がんの一次予防に繋がるものと推測されています。

Helicobacter. Pylori除菌で胃がんを予防できるか?

2013年2月より、胃がん予防を目的とした保険診療での除菌が可能となっています。我が国のランダム化比較試験では、早期胃がん内視鏡切除後の異時性胃がんの発症率(フォロー期間3年)が、除菌をすることで約1/3に低下したことが分かっています。一方、中国(胃がん多発地域)でのランダム化比較試験では、除菌群・非除菌群に胃がんの発症率の差は認めなかった(フォロー期間7.5年)と、本邦とは逆の結果が報告されました。しかし、同じ対象で萎縮・腸上皮化生(長期のH. pylori感染による変化)のない対象に限ると、除菌群の方が有意差をもって胃がん発症率が低かったことも分かっています。除菌療法により胃がん発症リスクを下げられる可能性はあるが、完全に抑制することはできないということ、胃がん発症リスクを効果的に抑制するには、H. pylori感染の影響が出ないうちに除菌をする必要があることが示される結果でした。こうした報告から、若い世代への除菌介入による胃がん予防の重要性が論議されるようになっています。

胃がん予防を目的とした若年者除菌への介入

2015年度より、秋田県由利本荘・にかほ市にて学校検診時に併せて行う中学生に対するH.pylori感染検査事業ならびに除菌治療が開始されています。当院消化器内科も医療的見地からのアドバイザーとして、この事業に参加しています。秋田県は胃がん死亡率が高い地域として有名ですが、中学生のH.pylori感染率は4.5%と低率であったことも分かりました。H.pylori感染している生徒のうち、多数の生徒が除菌治療も終了しました。若年者に対する除菌は、次世代への感染予防に結びつくとともに若年者胃がんを含めた確実な胃がん予防に大きな効果が期待できると考えています。

H. Pylori感染検査ならびに除菌について相談を希望される患者さまがいらっしゃいましたら、当院消化器内科へご紹介ください。上部内視鏡検査も随時予約を承っておりますので、是非とも当院をご活用ください。

消化器病センター

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