旧年中は格別の厚情を賜り誠にありがとうございました。先生方に患者さんを紹介して頂いたおかげをもちまして2016年は約440件の手術を行うことができました。厚く感謝を申し上げます。今年は昨年以上の症例数と質の高い手術を達成するべく外科スタッフ一同一丸となって精進していきますのでよろしくお願いいたします。
今回は、当科手術の柱の一つである胆嚢結石症、胆嚢炎手術のお話をいたします。
コレステロール胆石の危険因子として5F(女性、白人、肥満、40歳代、多産)が有名ですが、それら危険因子に当てはまらなくとも食生活の欧米化、摂取カロリーの増加、運動量の減少などにより現代の日本人全体が胆石のできやすい状態になっているのではないかと考えます。胆石症は検診患者さんの約5%に認められる疾患であり、超音波検査の普及により日常診療でよく目にすることのある疾患ではないかと考えます。
2009年に胆石症診療ガイドラインが出版され、2013年に急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドラインが出版され治療の流れが標準化されてきています。
無症状結石は経過観察が原則と示されています。しかし胆嚢壁の肥厚、評価困難症例や、患者が希望する場合には腹腔鏡下胆嚢摘出術が考慮されます。無症状胆嚢結石を経過観察した場合に考慮しなければならないのは有症状化と胆嚢癌発症です。無症状患者が発症する確率は年2-4%程度と言われています。一度有症状化した場合は手術適応となりますが、経過観察をした場合には軽症状患者が重篤な症状(急性胆嚢炎、胆管炎、膵炎、黄疸など)を発症する頻度は年1-3%程度、中等度症状を認める患者では年6-8%と報告されています。胆嚢癌の危険因子として胆嚢結石症は古くから言われてきています。
当科は腹腔鏡下手術の豊富な治療経験を 持っています。2009年より通常4個の創で行う通常式に加え創を減らしたreduced port surgery、臍を約2cm縦切りにしその創だけで手術を行う単孔式も導入しており胆嚢手術における腹腔鏡下率は90%を超えております。
無症状で炎症のない胆嚢結石症に対しては現在単孔式手術を第一選択術式としております。時間が経つと創はほとんど見えなくなり患者さんに非常に満足していただいております。慢性的な炎症をきたしている症例、急性胆嚢炎となった症例に対しては通常式腹腔鏡下手術を行っております。軽症、中等症急性胆嚢炎はガイドライン上高度の内視鏡外科技術を有する場合は早期腹腔鏡下胆嚢摘出術と示されています。以前と同様に一旦散らしての待機的手術も行っておりますが、準緊急手術の利点として病悩期が短くなることがあり患者さんに有益ではないかと考え施行しております。新たな患者さんがいらっしゃいましたら、是非とも当科にご紹介いただければ幸いです。今後とも何卒よろしくお願い致します。