初めまして、2017年4月1日より消化器外科外来医長を務めております金本 彰と申します。日本大学には約7年勤務しておりますが、駿河台の日本大学病院は初めての勤務となります。
経歴にありますように、三井記念病院で外科医としてスタートし、臨床のみならず基礎研究、トランスレーショナルリサーチ等の経験を経て、本年3月までは日大板橋病院高山外科で肝臓外科を中心とした臨床、後輩外科医の指導、法規制化がすすんでいる企業からの受委託研究(医師主導型臨床試験)に取り組みました。
近年、消化器癌領域において多くの新規抗癌剤や新規分子標的薬が出現し生命予後の延長が証明されましたが、決してそれらだけでは長期的寛解が得られるものではないという限界もみせています。しかしながら、それら新規薬剤と手術の併用は新たな可能性を示したのも事実です。難治癌である膵癌においてはTS-1による術後補助化学療法の併用で、5年生存率が40%超えまで改善しました(JASPAC 01試験)。また、「切除不能と考えられる大腸癌肝転移を有する患者でも、化学療法への反応が良好な場合には、ときに切除の候補となりうる。これらの患者の5年生存率は、最初に切除可能疾患が認められた患者とほぼ同じである。」とNCI(National Cancer Institute)よりConversion Surgeryの推奨が提言され、患者さんへ希望をあたえました。一方、非治癒因子を有する進行胃癌に対する化学療法単独 と胃切除+術後補助化学療法との比較試験(REGATTA試験)では、胃切除追加による生存率の改善は証明されない結果となりましたが、今後胃癌において保険適応となる免疫チェックポイント阻害剤によってどう変化するのか非常に興味深いところです。
このように、新規治療が出現するなか、日本では、少子高齢化そしてそれに伴う社会保障費の増加が問題視され、同時に高額な薬剤の出現により医療の世界においても費用対効果という概念が重要視されるようになってきています。手術とは、たとえ侵襲を与えども患者さんの延命を期すことに集約される治療行為と考えますが、外科治療においても費用対効果を真摯に受け止め患者さんと共に次の世代へのバトンタッチを真剣に考えていかねばならない時代のまっただ中にあると考えます。
日本大学病院消化器外科は新規性を意識した手術を展開しながらも、その手術適応に対しては十分に検討し決定されています。また、緊急手術のみならず開腹手術にも対応しており、中堅外科医達が、上司のサポートのもと活躍している印象を強くうけます。不思議な縁ですが国立がん研究センターで食道癌の臨床研究を共同させていただいた消化器内科・後藤田卓志教授も在籍し、内科との連携もスムーズな印象です。
患者さんとともに、最適・最良の治療を考えていきたいと思います。今後とも宜しくお願いいたします。