7月に入り、暑い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。平成28年4月より日本大学病院消化器外科の病棟医として勤務しております、松野順敬と申します。日本大学医学部を卒業し約9年がたちますが、医師になってから初めて日本大学病院で勤務させていただくことになりました。
日本大学病院の私の印象は、まず千代田区唯一の大学病院で交通の便も良く周囲に飲食店も多く、都会の病院ということです。また平成26年10月に新築され非常に綺麗で設備も充実した病院です。その中の消化器病センター内に消化器外科はあり、病棟医3名、さらに4名の上級医の7名の常勤医で主に診療を行っております。胃癌、大腸癌などの消化管悪性腫瘍から胆嚢炎、虫垂炎などの炎症性疾患、鼠径ヘルニアなどの腹壁疾患、痔核などの肛門疾患まで消化管から肝胆膵疾患まで腹部の疾患を幅広く扱っております。手術をして後方病院へ転送するということでなく、化学療法、緩和治療まで一貫して一人一人の患者さんの状態にあった治療を日々行っております。
今回は色々な疾患の中で、日本大学病院の救急外来でもよく診る虫垂炎の治療についてお話ししたいと思います。
虫垂炎の典型的な症状として心窩部から始まり右下腹部痛へ移動する腹痛を認めます。しかし典型的なものだけではなく、虫垂の位置によっては下腹部痛や背部痛を訴える場合もあります。炎症の程度により、圧痛だけでなく、腹膜刺激兆候を認める場合があり、この場合は腹膜炎を考えます。診断は問診、腹部所見に加えCTまたはエコーで虫垂の腫大、採血で炎症反応の上昇で確認します。手術適応としては、腹部所見と炎症反応、画像所見を総合的に検討し決定します。当院では主に腹腔鏡手術を行っておりますが、腹腔鏡手術は創が小さく術後の痛みも開腹手術に比べると軽いと言われており、術後の回復が早いことが多いです。腹腔鏡手術の最大のメリットは傷の小ささではありません。腹腔内の状態をほぼ観察できるということが最大のメリットなのです。虫垂炎以外の骨盤腹膜炎や憩室炎の正確な診断も可能であり、右下腹部だけの開腹手術では困難である上腹部の洗浄も十分に出来、ドレーン留置を回避できることもよくあります。また炎症の少ない虫垂炎の場合は臍部2−3cmほどの単孔式手術も行っており非常に患者様からも喜ばれております。もちろん腹膜炎がひどく麻痺性の腸閉塞を併発している場合は開腹手術の適応です。今後とも虫垂炎に限らず、腹部疾患が疑われる患者さんがいらっしゃいましたら、当院消化器病センター(消化器内科・消化器外科)にご相談・ご紹介いただけますようお願いいたします。