厚労省によると2016年において、新たに癌(上皮内癌を除く)と診断された患者は99万5,132例で、男性が56万6,575例(56.9%)、女性が42万8,499例(43.1%)でした。部位別の罹患数は、男性では胃(16.4%)、前立腺(15.8%)、大腸(15.8%)、肺(14.8%)、肝(5.0%)の順でした。過去の結果地域癌登録のデータと比較すると、男性における2位と4位が入れ替わり、前立腺癌が増え、肺癌が減りました。
前立腺癌の治療は内分泌療法にはじまり、手術療法、放射線療法そして抗癌剤療法と多岐にわたります。ここで、前立腺癌の治療の内訳で見るとDPCの出来高算定病院の治療実績では2015年4月から2016年3月の間に前立腺癌の治療で入院した患者数は155728人ですが、手術件数は21676人でその割合は13.9%に過ぎません。昨今話題になっているロボット支援手術はすべての症例に適応可能ではありません。手術体位が極端な頭低位となるために,未治療脳動脈瘤閉塞、頸動脈の動脈硬化による狭窄症そして隅角緑内障がある場合は禁忌であります。また直腸癌などの下腹部手術歴のある患者や高度の肥満患者などは,ロボット支援手術が適さない場合があります。残念ながら日本大学病院にはダビンチはありません。しかしダビンチの適応とならない患者について、安全に開腹手術を行える実績があります。さらには術後のPSA再発についても放射線科と連携をとることでスムースに外照射を導入することが可能であります。また不幸にも病状が進行した場合であっても、化学療法室と連携をとることで外来通院での抗癌剤の治療に移行可能であります。
さらに、前立腺癌骨転移に対して今までの内分泌療法に抵抗性を示す患者には、放射性医薬品基準 塩化ラジウム(223Ra)を用いることが可能となりました。
前立腺癌の罹患数は増加し前述したようにその数は上昇していますが、累積死亡率でみると男性の癌の全体数が25%なのに対して、前立腺癌のそれはわずか1%に過ぎません。診断から治療まで全人的な治療を行うことで、いわゆる天寿を全うしていただくのが我々泌尿器科の務めと考えております。
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