中国のある地域から感染が確認された新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)は,今では約10万人超の感染者が確認され,98の国と地域で感染が確認されております(令和2年3月8日現在)。そして,この感染の拡大はしばらく続くであろうといわれています。病原性微生物による感染症は,いつの時代であってもヒトにとっては脅威であり,最近でも世界の死亡者の5人に1人は敗血症が原因であったと報告されています(Lancet;395:200-211, 2020 )。残念ながら敗血症の死亡率の減少は認められておりません。
このような状況を打開するために,2016年に敗血症の定義が変更となりました。新しい定義は,「感染症に対する制御不能な宿主に起因した生命を脅かす臓器障害」と定義されました。この定義には4つのポイントがあります。第1に,重症敗血症という用語が消滅したこと,第2に,敗血症の診断基準にSOFAスコア(臓器障害を評価する指標)を採用したこと,第3にICU以外では,quick SOFAスコアを採用したこと,第4に敗血症性ショックの定義に低血圧のほか細胞・代謝の異常を追加したことが挙げられます。特筆すべきは,敗血症の治療に必要なことは早期の認識であるため,診療所や病棟,救急外来などで敗血症を疑った時の簡便なツールとしてquick SOFAスコアが考案されたという点です。
当院の救急診療体制は,救急科が救命救急センターだけではなく,日中は,2次救急の救急外来も担当しております。
ご紹介いただいた患者が,感染症を伴いquick SOFAスコアを満たす方であれば,まず始めに救急外来で対応いたしますが,敗血症と診断されれば,集中治療室に移動しそのまま治療を継続いたします。われわれ救急科が2次と3次救急,集中治療を担当しているため,患者の治療はシームレスです。この体制は,敗血症に限ったことではなく,救急車で搬送された全患者が対象となります。救急患者の搬送先にお困りの際には,救急外来担当医までご連絡していただければ対応いたします。