私は当院循環器病センターにおいて透析部門で日々の診療にあたらせていただいております。今回は当院での循環器疾患診療と透析患者さんを含めた慢性腎臓病診療についてご紹介させていただきます。
当院では以前から循環器内科医が透析診療にあたるという診療体制を敷いております。循環器内科医が透析業務というと意外かもしれませんが、近年、医学界では心腎連関といって心血管疾患と慢性腎臓病が密接に関連することが注目されています。腎不全が進行すればするほど、そして透析患者さんではさらに非腎臓病疾患の患者さんと比較し、心血管病による死亡率が高いといわれています。末期腎不全患者さんでは、非腎不全患者さんと比較し心血管病の死亡リスクは10倍以上とまでいわれます。その意味において、循環器科内科医が腎疾患、透析患者さんを拝見するのは合理的と考えられると思います。
私は入院透析患者さんの一般的な管理に加え、カテーテル治療を中心に診療させていただいております。透析患者さんの虚血性心疾患の特徴として、日本では特に糖尿病、高齢の透析患者さんが多いことから、無症候性心筋虚血があげられます。ある統計によりますと、透析患者さんにおいて経皮的冠動脈形成術(PCI)に至るまで、典型的な胸部症状を伴わなかった症例が6割に上るといわれています。当院では、透析患者さんを含む慢性腎臓病患者さんの無症候性心筋虚血を含む狭心症に対して、冠動脈CTや冠動脈MRI、心筋シンチなど最新の画像診断機器により積極的に精査を行い、治療を行っております。透析施設においては、自覚症状がない患者さんでも、心臓の精査をご希望される方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。また心臓カテーテル治療に加え、内科医、外科医、専門ナースによるフットケアチームにより重症下肢虚血を含めた下肢閉塞性動脈硬化症の治療も積極的に行っております。特に重症下肢虚血ではカテーテル治療と透析室でのLDLアフェレーシス、必要に応じて血管外科医によるバイパス術を連携して行っております。それ以外にも透析患者さんにとって最も重要なシャントトラブルについても可能な限り依頼当日の治療を行っておりますので、お困りの際は当院循環器内科にご一報いただければと存じます。
また当院、透析室では近隣の透析施設と連携を深める目的で、年に1回維持透析カンファレンスを主催させていただいております。これまでご参加いただいていないご施設でも、積極的な参加をお待ちしておりますので、ご希望があれば当院透析室に直接ご連絡いただければと存じます。次回の維持透析カンファレンスは平成29年秋ころを予定しております。
最後ではございますが、当院では循環器病センターを含め各科と連携しつつ、より良い医療をご提供できるよう努力して参りますので、今後ともよろしくお願いいたします。