昨年10月に旧駿河台日本大学病院から日本大学病院に移転、新規開院してから、早くも1年が経ちました。この移転にともない、我々医療従事者にとって、ある意味一番の大きな変化といえば、電子カルテの導入ではなかったかと思います。
日本大学病院では、最新型の電子カルテシステムが導入され、高度な医療を迅速に、効率よく、患者様の待ち時間を出来る限り少なくする最新の機能が導入されております。
しかしながら、臨床研究の側面からみると、デジタルデータとして保存されるはずの患者臨床データは、研究などへ有効に二次利用されていないのが現状です。
この問題は、すでに多くの電子カルテ導入施設で問題視されており、さまざまな対策がされていますが、通常これらの対策には多額な費用がかかり、広く利用されることがありませんでした。
このような問題を解決すべく、私は心臓外科手術の傍ら、電子カルテ介在型診療・研究支援システムの研究を行い、約10年に渡りシステムを開発してまいりました。この研究は、本学医学部、理工学部また、厚生労働省の協力のもとに行われており、日本で初めて、日本大学病院で試験導入が開始され、来年初めから本格導入が予定されています。今後、日本大学病院以外の病院でも比較的安価に導入できるシステムとして開発を進めております。
日本大学病院の医師たちは、患者様のために昼夜を問わず臨床診療を行っています。しかし、大学研究機関としての側面もあり、臨床研究にも多大な力を注いでおります。そのため、研究者はそれぞれのデータベースを持っていますが、それらはいままで電子カルテとは連携されておらず、個人的に1からデータを収集する必要がありました。
本システムにより、電子カルテと個人または医局、様々な部門が、高度なセキュリティで保護されている安全な電子カルテネットワークの内側で接続・連携され、電子カルテの貴重な情報を有効に極めて効率的にしかも安全に利用することが可能となります。
私は、最終的には患者様としっかり向き合って診療をする時間的余裕へとつながることと信じて、今後も研究を進めてまいります。