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日本大学病院

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ニュースレター

2022年10月号

SGLT2阻害薬は糖尿病のみならず、心不全と慢性腎臓病も改善する


常日頃より循環器内科に患者様をご紹介いただき、ありがとうございます。今回は糖尿病の薬剤であるSGLT2阻害薬が心不全や慢性腎臓病にも有効性があることをご紹介したいと思います。

我々、循環器病専門医にとって衝撃的であった無作為割付大規模臨床試験は2015年に発表されたEMPA-REG OUTCOME試験です。心筋梗塞や脳卒中の既往のある2型糖尿病患者に対して、既存の治療薬にSGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンの併用で総死亡を32%、心血管疾患による死亡を38%、および心不全による入院を35%、低下させました。これらの効果は他のSGLT2阻害薬でも確認されています。

SGLT2阻害薬による2型糖尿病患者の心不全による入院リスクを軽減する効果は、下記に示す6つ大規模臨床試験のメタ解析の結果では32%でした。心不全治療を目的とした薬剤でもこれほど大きな効果を得ることはありませんでした。現時点で心不全の適応承認があるSGLT2阻害薬はエンパグリフロジンとダパグリフロジンです。その効果は糖尿病がない患者さんでも同様に確認されています。心臓の収縮能力(左室駆出率)が低下した心不全患者に投与した時、心不全による入院を低下させる効果は、エンパグリフロジン31%、ダパグリフロジン30%と同等の効果を示しました。驚くべきは、高齢者に多い収縮能が保たれた心不全(左室拡張能不全)に対しては、有効な薬剤がなく、治療に苦慮しておりましたが、エンパグリフロジンは左室拡張不全においても心不全による入院を27%低下させました。

さらに慢性腎臓病に対するSGLT2阻害薬の効果も確認されております。4つの臨床試験のメタ解析では、人工透析の導入、腎移植、心臓病による死亡のいずれかを低下させる効果は33%でした。この効果も心不全に対する効果と同様に糖尿病の有無に関わらずに発揮されます。ダパグリフロジンは慢性腎臓病の薬として承認されており、慢性腎臓病の治療が新たなオプションの出現で幅が広がりました。

近年、心不全に対する薬物療法はSGLT2阻害薬を始め、新規薬剤の開発によって、大きく変わりつつあります。ご紹介いただいた患者様をお返しした際に、新たな心不全の薬剤が加わっている例が多々あると思います。高齢化社会を迎えるにあたり、心不全の患者様の割合も増えています。今後とも動悸、息切れ、あるいは浮腫等の心不全が疑われる患者様がいたら、ご紹介いただけると幸いです。



循環器病センター

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