耳鼻咽喉科【声門後部癒着症の話題】
今回の耳鼻咽喉科からのお知らせは、意外と医師の中でも知られていない(かもしれない)声門後部癒着症についての話題です。
声門後部癒着症は、両側の声帯が癒着のため動きが制限されるようになり、声門が開かなくなる病気です。人間が息を吸うときには、声門が開く必要があるため、この動きが制限されると呼吸困難となる訳です。声帯の後ろ側(背中側)には披裂軟骨という小さな軟骨がつながっており、この軟骨が輪状軟骨という別の大きな軟骨と関節を形成し、この関節面で滑るように回転・前後に動くなどすることで声門は開閉します。しかし、炎症が起きるなどして、声帯同士が癒着したり、ひどい場合にはこの披裂軟骨と輪状軟骨の関節が固着してしまう病気が、声門後部癒着症です。原因となるのは、気管挿管や喉頭の外傷・熱傷が挙げられます。最近では、新型コロナウイルス感染による肺炎で、人工呼吸が必要になるかたが気管挿管を長期的に行われることは広く一般社会にも知られるようになりました。気管挿管をした方で、声門部に強い炎症をきたすとこういった病気が出てくることがあります。この病気の場合、人工呼吸が不要になり、気管挿管のチューブを抜き去ったのち、しばらくしてから再度呼吸困難になることがあります。通常、気管挿管チューブの抜管直後であれば、多くは入院中であり、呼吸状態を厳重に確認されると思います。しかし、当院に受診された声門後部癒着症の方の中では、新型コロナウイルス感染による肺炎治療後に挿管チューブを抜いた後に2週間かけて徐々に呼吸が苦しくなり、2週間経ってから声門閉鎖状態であることが判明したという事例もあります。抜管直後ではなく、後になってから呼吸困難や嗄声が起こることがあれば、この病気の可能性を考えるとともに耳鼻咽喉科の受診を検討してみてもいいかもしれません。