脳神経外科【そう言えば頭をぶつけました・・「慢性硬膜下血腫」】
【慢性硬膜下血腫】
「そう言えば、2ヶ月くらい前に頭をぶつけました。」
元気がない、最近物忘れが出てきた、頭痛があると訴える患者さんに、「頭をぶつけたことがないですか?」と聞くとこう回答される場合があります。この場合、「慢性硬膜下血腫」の可能性があります。
慢性硬膜下血腫は、頭部外傷後に頭蓋骨の下にある硬膜と脳の表面の間に徐々に血腫(血液の溜まり)ができてしまう病気です。頭をぶつけて、2週間から3ヶ月過ぎてから出現してきます。頭をぶつけた直後は特に症状なく、画像を撮っても何もないのが特徴です。
しかし、その数週間から数カ月のち、頭痛がする、なんとなく元気がない、言葉が出にくい、麻痺がある、歩行がおかしい、よく転ぶようになった、といった症状が出てきます。また圧迫が重度な場合は痙攣や意識障害を起こすこともあります。高齢者やアルコールをよく飲む人、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬、抗血小板薬)を飲まれている方は発症リスクが上がります。
頭部C T検査で診断がつきます。脳が血腫により圧迫されている所見が見られます。治療は症状が軽く血腫が小さい場合は、内服での自然吸収を期待します。症状が出現しており血腫が大きい場合は手術を行うこととなります。手術は、局所麻酔下で頭蓋骨に穴を開け血腫を洗浄し取り除きます。そして血腫を取り除いた空間に細いチューブを入れて終わります。1時間程度の手術を手術室で行います。
一般的に、血腫による脳の圧迫が取り除かれると手術直後から麻痺や頭痛、認知症などの症状が回復してきます。翌日には頭部CTを再度撮影し、手術後の問題がなければチューブを抜き、食事や歩行などを開始します。またリハビリテーションも開始します。約1週間後に頭部CT写真を再度撮影し再発がないことが確認できれば退院できますが、退院時期は合併症や手術前の生活状況によって変わってきます。また約10%の方は再発することがあります。その場合には再度手術となる場合があります。
日大病院の脳神経外科では、患者さんの早期回復のために、手術が必要な場合は基本的に当日ないしは翌日には手術を行います。手術翌日には食事や体を動かすことを開始し、入院期間中はリハビリテーション科と連携し患者さんの身体機能回復及び維持が行える体制をとっております。また治療費のことや退院後の不安などに関しても、医療福祉相談室や患者サポート相談支援窓口にて相談ができます。
かかりつけ医や近隣病院、クリニックでの診察や画像で慢性硬膜下血腫が疑われる患者さんがいらっしゃいましたら、24時間365日お気軽に日本大学病院脳神経外科へご相談・ご紹介ください。