日頃循環器病センターをご利用頂き有り難うございます。今回のニュースレターでは心原性ショックに対して用いる補助循環装置であるImpellaについてお話をさせていただきます。
現在、東京ではCCUネットワークという24時間循環器救急が対応できる病院で連携を取りながら循環器救急疾患が治療されております。この為、都内のどこで胸痛患者が生じてもすぐに直近のCCUネットワークに加盟している病院に搬送されます。
当院でも24時間、365日、急性冠症候群や急性心不全症例に対応できる体制を整えております。その循環器救急疾患の中でも最も重症な疾患の一つに、心原性ショックを伴った心筋梗塞があります。通常、緊急で閉塞した冠動脈を再開通する手技を行います。しかしながら血圧が下がってしまうような広範囲の心筋梗塞ですと、心不全、多臓器不全や、心不全死へ進んでしまいます。これまではIABP(大動脈内バルーンパンピング)やPCPS(経皮的心肺補助装置)という補助循環装置を使って、循環動態を安定させながら治療を行ってきました。PCPSは全身の臓器に心臓の代わりに血液を送り、IABPは心臓の仕事量の軽減する作用を持っておりました。しかしながら、これらでは左心室の梗塞部位の機能改善には寄与しないことも知られていました。
その中で、2017年から日本でも使用可能となった補助循環にImpellaがあります。これは左心室から大動脈に1分間に最大約5L程度の血流を流すことが可能となります。これにより左心室の負荷を大幅に軽減することが可能となりました。我々の研究でも心原性ショックを伴った心筋梗塞症例に対してこのImpellaを用いて治療した左心室と使わずに点滴やIABPだけで治療をした左心室の心機能を後ろ向きに検討した処、退院時に左心室の壁運動の改善にImpellaを使用した方が有意に心機能の改善を認めたことを発表しております1。
もちろん、我々循環器内科の使命として、急性心筋梗塞を発症しないような一次予防(高血圧、脂質異常症、糖尿病、などの管理)が一番重要なのは言うまでもありません。しかしながら、一度心筋梗塞や虚血性心疾患を発症した患者の多くはまた再度虚血性イベントを発症します。その虚血性イベントの再発の中には、心原性ショックを伴う心筋梗塞もございます。
我々はImpellaという補助循環を至適に用いることにより急性期治療から、心機能改善を心掛けております。糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの動脈硬化を有している患者様や他院で一度冠動脈ステント治療を受けており、その後専門外来継続が中断してしまったような患者様がいらっしゃいましたら、いつでも当院にご紹介いただけましたら心臓の精査を行わせていただきます。そして、その後も継続して、かかりつけ医の先生方と併診をさせて頂きます。
何かありましたら循環器内科 深町大介までご紹介頂けますと幸いです。
1. Fukamachi D, et al. Protective effect of the Impella on the left ventricular function after acute broad anterior wall ST elevation myocardial infarctions with cardiogenic shock: cardiovascular magnetic resonance imaging strain analysis. BMC Cardiovasc Disord. 2022;22(1):201.