昨年10月に旧駿河台日本大学病院から日本大学病院に移転、新規開院してから、早くも半年が経ちました。移転のための引っ越し、新病院での電子カルテやその他のシステムの導入など慌ただしい混乱の時間が過ぎ、最近はやっと落ち着いて診療、研究、教育に携わることができるようになりました。
病床利用率も目標まであと少しのところまで上昇し、病院のスタッフのモチベーションが上がり、病院全体の雰囲気も良くなっていることを実感しています。これもひとえに当院の近隣関係医療機関の方々のおかげと深く感謝申し上げます。
我々循環器病センターも診療内容が日々充実してきております。特に心臓血管外科では、低侵襲手術の導入が大きな方針として実践されております。特に我々のチームの秋山謙次センター長(副病院長)が開発し、秦光賢病棟医長が改良して行っている胸部大動脈瘤に対する軽度低体温ステントググラフト内挿術は手術時間を従来の方法より大幅(1/3)に短縮し、術後入院期間短くし、また死亡率も低い優れた手術術式として認められています。3月26日付けの読売新聞夕刊にこの手術が紹介され、全国から見学者が来るようになりました。
また、当科では腹部大動脈瘤、胸部大動脈瘤に対する低浸襲手術として大動脈ステントグラフト挿入術を中村哲哉外来医長を中心に、積極的に行っています。この術式は鼠径部の数センチの傷で手術が可能で、従来の手術方法より体へ負担が大幅に軽減、手術時間も短縮される優れた術式です。
このように、当院のみならず全国の病院で様々な低浸襲手術が広く行われるようになっておりますが、肝心なことは低浸襲手術を行うことが目的では無くて、我々の最終目的は患者さんに安全かつ効果的な手術を行う事です。昨今、報道されているような低浸襲手術に固執するあまり患者さんに不利益(最悪の場合は死亡)を与えるようなことは厳に慎まなくてはなりません。この事に留意して常にブレーキが掛かるようなチーム作りをしなくてはならないと思っております。