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2023年4月号

 脳神経外科【めまいの外科治療】

めまいの外科治療

 

「めまい」「耳鳴り」にはさまざまな原因があります。多くは「内耳」と呼ばれる聴く神経や体の平衡感覚を保持するための半器官等の機能障害で、良性発作性頭位変換性めまい、メニエール病、前庭神経炎などの耳鼻科的疾患です。

その中で、三叉神経痛や顔面痙攣を生じる機序と同様に、蝸牛・前庭神経に対する脳血管圧迫によって難治性耳鳴りやめまいを引き起こすことがあります。タイプライター様といわれる耳鳴りが特徴で「カタ、カタ、カタ」と鳴り出し、時に電撃様ともいわれるように「バキ、バキ、バキ」と鳴り始め、さらに立っていられないほどの回転性めまいが付随してきます。頭部MRIを撮像すると、血管が蝸牛・前庭神経を圧迫変位していることがわかります。第一選択の治療法は、テグレトールの内服です。症状の改善があるようでしたら、やはり脳血管圧迫が原因であると強く疑われます。症状が増悪してきて内服だけでは症状のコントロールがつかなくなる場合や、テグレトールによる副作用が強く内服継続が困難になる場合には外科的治療を考慮します。


<めまいに対する外科治療例 ①>

数年前から進行する左側の拍動性耳鳴りがあり、3年前からは回転性めまいを併発するようになった。最近になって症状が増悪してきたため当院脳外科を受診された。頭部MRI画像では左前下小脳動脈(AICA)が内耳道内でループを形成し、左聴神経への圧迫所見がみられた。カルマバゼピン(CBZ)内服で症状が寛解することから、左AICAを責任血管とする神経血管圧迫症候群と考えられた。症状の増悪に伴い、CBZは極量まで達しているものの症状は完全消失しないため、神経血管減圧術(MVD)を施行した。術中所見では、内耳道を開放し、前庭神経とAICAとの接触部の圧痕を視認した。AICAを錐体骨側へ転位させて固定し、さらにinterpositionも追加施行した。術直後から、CBZは不要となり症状は完全消失した。経過良好で約半年の経過であるが、症状の再燃を認めていない。


<めまいに対する外科治療例 ②>

数年前から回転性めまいを自覚し、左耳鳴りも伴ってきた。それまで複数の病院で診察や検査を受け、自律神経失調症やうつ病の診断で投薬治療を受けた。改善しないため当院耳鼻科を受診された。頭部MRI画像では左AICAが内耳道内でループを形成し、神経を圧迫している所見がみられた。カルマバゼピン内服で症状が寛解することから、左AICAを責任血管とする神経血管圧迫症と考えられた。テグレトールによる肝機能障害が出現してきたため内服の継続が困難となったためMVDを施行した。術中所見では、内耳道を開放し、前庭神経とAICAとの接触部の圧痕を視認した。AICAを錐体骨側へ転位させて固定し、さらにinterpositionも追加施行した。術直後から、CBZは不要となり症状は完全消失した。経過良好で症状の再燃を認めていない。


症例①                    症例②



めまいや耳鳴りの中には、頻度は少ないながらもこのような神経血管圧迫によるものもあります。難治性で頻度や程度が強い症状の患者さまがおられましたら日本大学病院脳神経外科にご相談ください。


日本大学病院脳神経外科は、24時間365日あらゆる脳神経外科疾患に対応しています。

お気軽にご相談・ご利用ください。

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