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2023年6月号

脳神経外科 ≫【いつ発症したのかわからない・・・『Wake up strokeについて』】(脳梗塞について)

【いつ発症したのかわからない・・・『Wake up stroke』】(脳梗塞について)


脳卒中には脳梗塞、脳出血そしてくも膜下出血があります。特に脳梗塞は早期の治療が予後に関係するため、発症してから迅速な動き(治療開始までの時間)が重要となります。

 今回は、脳梗塞の発症様式の1つとしてWake up strokeという概念をご紹介します。


Wake up strokeとは患者が睡眠中に脳卒中を発症し、起床時にその症状を初めて認識する状態を表します。Wake up strokeが他の発症様式と違うのは正確な発症時間がわからないという点です。脳梗塞の治療では発症後の時間経過が重要な要素となり「症状の出現から治療までの時間」が短ければ短いほど治療の効果が期待できます。症状が出現した時間から4時間30分以内であれば遺伝子組み換え組織型プラスミノゲン・アクティベータ(rt-PA)の静脈投与による血栓溶解療法や比較的太い血管が詰まっている場合にはカテーテルで閉塞部位の血栓を摘出する機械的血栓回収療法が急性期脳梗塞の治療となります。


『脳卒中診療ガイドライン2021』ではrt-PAは発症から4.5時間、また機械的血栓回収療法の最も効果的な時間は8時間以内とされています。以前は発症時間不明であるWake up strokeは時間の関係で適応外と判断され上記のような治療を行うことができませんでした。しかし国内外で様々な臨床試験が行われた結果、現在では経過時間だけでなく画像診断も急性期脳梗塞の治療適応判断に用いられるようになりました。具体的には発症時間不明な脳梗塞の発症経過時間をMRIやperfusion CTを用いて推測し治療適応を決めるというものです。


発症時間が不明でも画像検査上で治療効果があると判断されればrt-PA静注や機械的血栓回収療法を行います。画像検査の結果から適応と判断されれば、rt-PA4.5時間以上でも、また機械的血栓回収療法は16-24時間以内で推奨されるようになりました。

機械的血栓回収療法とrt-PA静注を行い、再灌流を得ることができれば症状の改善や症状の悪化を防ぐことができます。図のように早期の再灌流を認めた場合でも、症状の残存がみられる場合はリハビリテーションを行い症状の改善に努めます。手術後は脳の血流がダイナミックに変化するため、術後ケアも重要になります。安心・安全に治療が受けられるよう主治医とよく相談して治療を受けることが重要です。


脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)は、発症時間から早急に治療を開始することが大切ですが、時間が経過してしまっても意識障害、構音障害、片麻痺など脳梗塞を疑われる症状がある場合は治療が可能な場合があります。治療により改善が期待しうる脳梗塞は発症経過時間に関係なく最適な治療を行うことが重要です。


日本大学病院 脳神経外科では365日24時間、rt-PAや機械的血栓回収に対応できる体制で脳神経外科救急医療を提供しています。


脳梗塞の治療などについては、20回(一社)日本脳神経外科学会 関東支部 市 民 公 開 講 座 パンフレット でもご紹介しています。日本大学病院、東京慈恵会医科大学 虎の門病院によって監修されたパンフレットは、日本大学病院外来他で配布しておりますのでご利用ください。


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