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日本大学病院

医療関係者の方へ
ニュースレター

2024年7月号

術後眼内炎パーフェクトマネジメント

盛夏の頃、皆様におかれましてはますますご健勝のこととお慶び申し上げます。常々、たくさんの患者様をご紹介いただきありがとうございます。

コロナ禍もやや落ち着き、電車内でもマスクをしない人が多くなってきました。この時期、マスクをするには息苦しさを感じる季節となります。私は混雑した電車内ではマスクをするようにはしていますが、空いた車内や歩行時はマスクを外しています。マスク生活には弊害もあるようであり、表情筋の衰え、笑顔のぎこちなさ、肌荒れ、口呼吸の増加による感染症、アレルギーの増加、コミュニケーション障害などが挙げられています。眼科においてもコロナ禍で硝子体手術後眼内炎が有意に増加し、マスクによる口腔内細菌の眼表面への散布が関与している可能性があるという事が日本網膜硝子体学会から報告されました(Sakamoto T et al. Br J Ophthalmol, 2023)。今まで以上に手術の際には眼内炎対策に気を付ける必要があります。

また最近、日本網膜硝子体学会の硝子体内注射時の抗菌薬ワーキンググループから通常の患者(感染症のリスクが高くない患者)には黄斑疾患に対する硝子体注射ガイドライン(日眼誌120:87-90, 2016) を遵守すれば注射前後の抗菌薬点眼を使用しなくてもよいという通達がありました。当院では現在年間1万件を超える硝子体内注射を行っていますが、以前から安全性試験、有効性試験の結果から注射前後の抗菌薬点眼は行っておらず(Tanaka K . Jpn J Ophthalmol, 2019)、 我々の研究結果も今回のことに貢献できたかと喜んでいます。 しかし、その一方で、抗VEGF薬の添付文書は改変されていなかったり、改変されていても術前の抗菌薬点眼は引き続き3日間使用することとなっていたり、結局は医師の判断の基ということになり、クリニックの先生方におかれましては引き続き安易に抗菌薬を止めにくい状況と言えます。硝子体内注射前後の抗菌薬点眼の問題点としては同一の抗菌薬点眼を注射前後に繰り返し使用するため、眼内炎抑制効果がないだけではなく 、耐性菌の増加を招くことが指摘されています。抗VEGF薬硝子体内注射を行っていた患者が硝子体手術を受けるケースも考えられ、抗菌薬投与による耐性菌増加が前述した硝子体手術後眼内炎増加につながっている可能性もあるのではと思ってしまいます。

 当院では以前から眼内炎対策には力を入れており今年の2月に術後眼内炎パーフェクトマネジメント第3版・日本医事新報社・定価6200を前日本大学病院教授の島田宏之先生と私の共著で出版しております。ポビドンヨードを中心とした眼内炎対策について幅広く書いており、今回は電子版も付いておりますので宜しければご覧になってみて下さい。

引き続き、たくさんの患者様のご紹介を宜しくお願い致します。

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