植込み型心臓電気デバイス(CIEDs)について
日本大学病院 循環器病センターの磯一貴です。
今回、私は植込み型心臓電気デバイス(CIEDs)についてお話しさせていただきます。
CIEDsとは不整脈の診断、治療を行う機器の総称であり、CIEDsには徐脈性不整脈のためのペースメーカ(PM)、致死的不整脈に対する植込み型除細動器(ICD)、心機能が低下している心不全に対する心臓再同期療法(CRT)などがあります。心臓は電気によって動いており、その電気活動が低下すれば徐脈になり、逆に激しくなり過ぎてしまうと致死性不整脈となってしまいます。また、電気活動に大きな乱れがなくても、それが効率よく心臓に伝わらないと心不全となってしまうため、これらの病態をサポートするためにCIEDsが必要になるのです。
徐脈や心不全の症状は重症なものばかりではなく、体動時の息切れや動悸など軽微であることもあります。加齢や一時的な疲労の影響と勘違いしてしまう場合もありますので、原因不明の胸部症状があったり違和感を感じるようなことがあればいつでも当科へご紹介ください(内線5494)。
CIEDsは通常は本体を胸部に、本体と心臓をつなぐための導線(リード)を静脈を通して心臓内に留置します。しかし、静脈が閉塞していたり、奇形などで静脈がなかったりした場合は、リードが不要なリードレスペースメーカや、皮下植込み型除細動器などを選択したりと、当院では患者様の状態に応じたCIEDsを提供することができます。
本邦では、PMは年間50,000件前後、ICD、CRTはそれぞれ年間4,000件前後の新規植込みがされており、決して珍しい治療ではありません。しかし、日本人は特に身体にメスを入れる、機械を入れるといったことに強い抵抗を感じる方が多く、最初にCIEDs治療を提案した時には戸惑う患者様やご家族様が少なくありません。我々は、CIEDsの必要性、有効性を丁寧に説明することを心がけており、最終的にはご理解をいただいてみなさま笑顔で退院されております。
また、退院後は当院のデバイス外来(毎週金曜日午後)で定期的にフォローさせていただきます。通院間隔は病態に応じて4−12ヶ月毎ですが、当院では特に遠隔モニタリングに力を入れております。遠隔モニタリングとは、患者様の自宅などから専用の送信機やスマートフォンを介して、CIEDsの情報を医療機関から閲覧することができるサービスです。遠隔モニタリングで得られる情報は対面で得られる情報と遜色がないことがわかっており、感染症対策や、体力低下などで通院困難な患者様の通院間隔が延長できることにも役立っております。さらにアラート送信機能も兼ね備えているため、致死性不整脈が出現したりデバイスの不具合が生じた場合には、それらのデータが医療機関に自動送信され早期対応が可能となります。
このような体制を万全にすることで、患者様やかかりつけ医の先生方と直接会わずとも密な連携をとることが可能となり、安心していただける医療を持続的に提供できるように心がけております。是非とも当院へのご紹介を心よりお待ちしております。