食道静脈瘤の内視鏡治療について
肝硬変の原因として大部分を占めていたC型肝炎が直接型抗ウイルス薬の普及により減少し、近年は脂肪肝を背景とした肝硬変に遭遇する機会が増えました。脂肪肝を背景とした肝硬変は画像検査がされなければ早期診断が難しく、上部内視鏡で食道静脈瘤が偶然発見され、肝硬変に気づかれる症例も経験します。
発赤所見(Red Color sign)陽性や形態がF2以上の食道静脈瘤は破裂リスクが高いとされ、予防的治療が推奨されています。
食道静脈瘤の内視鏡治療は大きく2種類あり、内視鏡的食道静脈瘤結紮術(EVL:Endoscopic Variceal Ligation)と内視鏡的食道静脈瘤硬化療法(EIS:Endoscopic Injection Sclerotherapy)があります。
EVLは内視鏡で静脈瘤を吸引し、ゴムバンドで結紮することで静脈瘤の血流を遮断し壊死・脱落させる治療です。EVLは手技が簡便で短時間で終わりますが、再発が多いとされています。
EISは透視下で行われ、局注針で静脈瘤を穿刺し、バルーン閉塞下に逆行性に門脈から伸びる側副血行路に向かって硬化剤を投与する治療になります。静脈瘤に対する穿刺技術や透視画像で側副血行路への硬化剤到達具合のモニタリングなど、内視鏡技術だけでなく門脈血行動態を理解した医師でないと施行が難しい反面、静脈瘤の根本である側副血行路自体を潰すことになるので、成功すれば再発が少ないことが利点となります。
当院では肝臓専門医と内視鏡専門医の両者を持つ肝臓内科医が勤務しており、EISの適応症例には積極的にEISを行い、再発リスクの軽減に努めています。
またEIS単独では静脈瘤消退まで2-3回治療が必要で、入院期間も2-3週間必要でしたが、当院では初回EIS後に、追加でEVLを行うEISLを行うことで、入院期間を10日間程度に短縮することも可能となりました。
日々の診療で食道静脈瘤の患者様に出会いましたら、ぜひ当院消化器内科までご紹介いただければ幸いです。
・EIS前 ・EIS中(透視画像) ・EIS後