アピアランスケア シリーズ第3弾 「乳がん術後の傷あとケアテープ」
【乳がん術後の整容性(アピアランス)とは】
乳がん術後の整容性(アピアランス)とは、手術後の美容的な仕上がり、見た目のことであり、乳房の大きさ、形、位置、傷あと、などによって評価されます。目立たない傷あとにするための手術では、創傷治癒(皮膚が傷ついた際に自然と元の状態へと治ろうとする働き)が円滑に進むように、術前の手術デザインである皮膚切開ラインの選択や、創感染・SSI(手術部位感染)の予防のための創傷被覆材の使用や、手術後の肥厚性瘢痕・ケロイドの予防のための術後のケアが大切になります。
【傷あとケアテープ】
手術後の傷あとを目立たせる要因は物理的刺激なのですが、物理的刺激の中でも伸展刺激の抑制(皮膚を伸ばさないこと)が特に重要で、伸展刺激を抑制するのが傷あとケアテープです。2021年版の『がん治療におけるアピアランスケアガイドライン』でCQ38「手術瘢痕の顕著化を防ぐ方法としてテーピングを行うことを弱く推奨する。」と記載され、科学的根拠のある治療法として推奨されています、また、『形成外科診療ガイドライン』でも同様に推奨されています。傷あとに対するケアは、現在の外科医に求められていることであり、創傷治癒コンセンサスドキュメントに示されている「今時、癌は治すことが大切で、傷が醜くてもしょうがないと思っている外科系医師はいないであろう。」を肝に銘じ、当科では手術手技から周術期管理までの創傷治癒を考慮した手術を施行しています。
当科では術後2週間後から、創部に問題がなければ肥厚性瘢痕ならびにケロイド予防のためにテーピングを開始します。以前はサージカルテープを短冊状に切って重ねて貼付していましたが、テープによる接触性皮膚炎が多いことや貼付方法が繁雑であることから、ケアを途中でやめてしまう患者さんが多いことが問題でした。現在は、サージカルテープの代わりとして、肌にやさしく患者さんでも簡単に貼付できるニチバンのアトファインを用いることで、術後6か月間のケアが可能となりました。また、アトファインは肌に馴染みやすい色合いで、傷あとを隠せるという点で患者さんが喜ばれるケースが多いことに気が付きました。さらに、患者さんは傷あとがどんどん綺麗になっていく過程を目のあたりにすることから 、アトファインを『魔法のテープ』と呼ぶ患者さんもいます。当科のモットーは、『“傷が目立たない”から、“傷が分からない”乳がん手術へ』『整容性を追求していくことは、患者さんの身体だけでなく、心も救う』であり、患者さんの乳房の傷あとや喪失感をなるべく少なくすることを、今後も目指していきたいと思います(小関のニチバンのケースレポートから引用)。
以前のサージカルテープ貼付時 現在のアトファイン貼付時 小関のニチバンのケースレポート