当院における十二指腸腫瘍に対する内視鏡治療
当科では上部消化管内視鏡検査・大腸内視鏡検査といったルチーンの内視鏡検査を始めとし、消化管腫瘍に対する拡大内視鏡検査・消化管出血や小腸腫瘍に対する小腸内視鏡検査などの専門性の高い検査、消化管腫瘍に対するEMR・ESD、緊急疾患に対する内視鏡的止血術・イレウス管留置術・ステント留置術など各種内視鏡治療にも尽力しています。
とりわけ、2024年1月より新たに三浦義正教授が就任されたことにより、十二指腸腫瘍に対する内視鏡治療にも積極的に取り組むようになりました。十二指腸は壁が薄く胆汁や膵液などの消化液に暴露されやすいため、内視鏡治療に伴う出血や穿孔などの偶発症のリスクが高く、難易度の高い部位とされます。Underwater EMRはスネアで一括切除が可能な20mm未満の腺腫や粘膜内癌を適応とし、偶発症が少なく比較的簡便な手技として近年普及しており、当院でも施行しています。
当院でunderwater EMRを施行した症例を呈示します。この症例は術前内視鏡で8mm大の十二指腸腺腫と診断し、underwater EMRの方針となりました。まず、先端フードを装着したスコープで病変にアプローチし、ウォータージェットを用いて消化管内腔を生理食塩水で満たします。その後、粘膜下局注は行わずに病変をスネアで絞扼し高周波装置を用いて通電しながら切除します。浸水下では送気下と比べ粘膜の緊張が緩み病変が管腔内に浮き上がるような状態になるので、筋層を把持するリスクが少なく比較的安全に切除できます。また、過度の粘膜下局注により病変が広がり分割切除となるのを防ぐことができます。病理診断の結果は十二指腸腺腫であり断端陰性でした。
内視鏡治療後に病理診断により追加手術が検討される場合も、消化器外科と連携し早期の手術が可能となっています。当科で施行している内視鏡治療の一例をご紹介しましたが、その他にも様々な内視鏡検査・治療に日々従事しています。内視鏡検査や治療をご検討される患者さまがいらっしゃいましたらいつでもご紹介ください。今後ともよろしくお願いいたします。