循環器疾患と腎疾患
当院は循環器内科医が腎疾患または透析患者さんを管理させていただいております。このため今回は循環器疾患と腎疾患についてご紹介いたします。
昨今、循環器疾患と腎臓疾患が互いに関連し相互に作用することから心腎連関という概念があります。心臓と腎臓の関係において、心血管疾患(CVD)は慢性腎臓病(CKD)患者の主要なリスクであるといわれています。糖尿病や高血圧といった古典的なリスクを調整した後でもCVDの死亡リスクはCKDの悪化とともに増加するといわれています。CKDの悪化に伴いもちろん心不全が増えますが、冠動脈疾患についてもCKDステージの悪化に伴い増加するといわれています。そして末期腎不全である透析患者さんにおいては日本透析医会の報告によると、死亡原因の第1位は心不全、第2位が感染症、第3位が悪性新生物であるとされ、一般の患者さんでは第1位が悪性新生物であるのに対し透析患者さんでは心疾患が第1位となっているのです。
逆にCVD患者さんにおいてはCKDの合併が多いことが知られ、CKDは独立した予後予測因子です。本邦の大規模研究において、55歳以上の冠血行再建術を受けた患者さんの40%以上、心不全により入院した患者さんの70%以上がCKD G3-5の腎不全を合併していたといわれております。またCVD患者さんの予後はCKDステージが悪化するほど悪化するといわれ、これらのことからCKDとCVDはお互いに密接に関係していることが伺われます。
さらに透析患者さんにおける循環器疾患の特徴として、無症候性に発症することが指摘されています。無症候性であれば当然疾患の発見が遅れる可能性が高く、その重症度や致死率は非透析患者さんの循環器疾患より高くなることが予想されます。
透析患者さんが心疾患で亡くなる確率が高いこと、透析患者さんの循環器疾患が無症候性であることを考えると循環器科医が透析を管理し、早期に治療介入することは、理にかなったことといえるかもしれません。これらのことを踏まえ、当院透析室では他科疾患で入院された透析患者さんにも上記のことをお伝えし積極的に循環器疾患の検索を行っております。入院した際に心筋シンチ、冠動脈CT、心エコー、ABIなどを施行し、循環器疾患検査を実施しております。循環器疾患検査は外来で通院検査を行うパターンと2泊や3泊で入院いただき、循環器疾患にかかわらず癌の検査を含めて行うパターンなども用意させていただいております。これらは当院に入院された患者さんのみならず、近隣の懇意にさせていただいているクリニックにもご案内させていただいております。
当院透析室は上記のように他院とは異なった形態で運営させていただいておりますが、これからも地域の透析患者さんのお役に立てるよう努力してまいりたいと思いますのでよろしくお願いします。