アピアランスケア シリーズ第5弾「抗がん剤による爪障害の予防としての冷却療法」
【抗がん剤による爪障害とは】
乳がんの治療の1つとして抗がん剤治療がありますが、その副作用として爪障害が生じることがあります。抗がん剤による爪障害とは、爪の色調変化(褐色調や白色調)、爪表面の横溝形成(ボー線条)、爪の剥離や脱落などが生じ、爪の外見(アピアランス)の変化だけではなく、痛みを伴うこともあります。特に、乳がんの治療でよく使用される抗がん剤のタキサン系薬剤(パクリタキセル、ドセタキセル)で爪障害の頻度が高く、投与回数が増えるにしたがって、累積投与量の増加に伴い、爪障害の発現が増えることが知られています。また、爪障害だけではなく、抗がん剤誘発性末梢神経障害(CIPN:Chemotherapy Induced Peripheral Neuropathy)と言われる手足の痺れの副作用も出現することが多いです。
【冷却療法とは】
以前、アピアランスケア シリーズ第2弾で紹介した『頭皮冷却装置による抗がん剤脱毛予防法』の原理と同じでありますが、冷却療法とは、抗がん剤の投与時に両手に専用の冷却手袋(フローズングローブ、クールミトン)を着用し、手を冷やすことで指先の血管を収縮させ、その血流を減らすことで、指先へ到達する抗がん剤の作用を抑制させ、爪障害と手足の痺れの予防法です。他にも、サイズの小さい手術手袋を着用し、指先の血流を減少させる、手術手袋圧迫療法もあります。2021年版の『がん治療におけるアピアランスケアガイドライン』でFQ11「タキサン系薬剤による爪障害の予防に冷却療法は勧められるか」に対しては、「タキサン系薬剤による爪障害の予防として、冷却療法の有用性が検討されている」と記載され、現在は科学的根拠のある治療法ではないですが、今後の冷却療法による有用性や安全面の研究が期待されています。
当院ではタキサン系薬剤を投与する患者さまに、当院の冷却手袋を貸し出して、冷却療法を施行しています。実際は、冷凍庫で冷却した手袋を、タキサン系薬剤の投与前後それぞれ15分間と投与中の1時間の合計約90分間にわたり、患者さまに着用してもらっています。希望の患者さまに実施していますので、いつでも、化学療法室の看護師にお声をかけて下さい。



当院の患者さまに貸し出し用の,冷却手袋のフローズングローブ