睡眠時無呼吸症候群と眼疾患
常々、先生方には貴重な患者様をご紹介いただき、誠にありがとうございます。
今回は、近年眼科領域でも注目されている睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)と眼疾患との関連について、中心性漿液性脈絡網膜症(central serous chorioretinopathy:CSC)を中心にご紹介いたします。
SASは 、睡眠中に 無呼吸・低呼吸 を繰り返す疾患であり 、男性では40〜50歳代に多く 、女性では閉経後に増加します。主な症状として、いびき、夜間頻尿、日中の眠気、起床時頭痛などがあり、特に日中の眠気は作業効率の低下や居眠り運転事故、労働災害の原因にもなり得ます。
さらに、高血圧、糖尿病、脳・心血管疾患など、多くの全身疾患との関連が知られています。
眼科領域においても、緑内障、CSC、非動脈炎性前部虚血性視神経症などとの関連が報告されています。 特に緑内障では、SASに伴う夜間低酸素、眼灌流圧低下、自律神経障害などが視神経障害に関与すると考えられており、正常眼圧緑内障との関連も指摘されています。 また、進行例や治療抵抗例の背景にSASが存在する可能性も示唆されています。
近年では、 CSCとSASとの関連についても関心が高まっています。 CSCは、ストレス、ステロイド使用、交感神経活性亢進などとの関連が知られていますが、 SASに伴う慢性的低酸素状態、交感神経系亢進、コルチゾール代謝異常などが脈絡膜循環へ影響し、 CSCの発症や遷延化に関与する可能性が考えられています。実際に、CSC患者ではSASの合併率が高いとする報告もみられます。
当科では、
- 難治性・再発性CSC
- 比較的若年で進行する正常眼圧緑内障
- 強いいびきや日中傾眠を伴う症例
- 肥満、高血圧などの全身リスクを有する症例
などにおいて、問診や臨床所見からSASの関与を念頭に置き、患者様と相談のうえ、携帯型睡眠時無呼吸検査装置による自宅での簡易検査を実施しています。
中等症以上が疑われる場合には、当院SAS専門外来を受診いただき、呼吸のみならず脳波や眼球運動などを含めて睡眠の質を詳細に評価する終夜睡眠ポリグラフ検査(polysomnography:PSG)を施行しています。 また、必要に応じてCPAP(Continuous Positive Airway Pressure:持続陽圧呼吸療法)による治療導入を行っています。
眼科疾患は局所疾患として捉えられがちですが、SASのような全身性疾患との関連を意識することで、新たな病態理解や治療介入につながる可能性があります。今後も、眼科と全身疾患との関連に着目しながら、診療・研究を進めてまいります。
難治性CSCや進行性緑内障など、SASとの関連が疑われる症例がございましたら、ぜひお気軽にご相談・ご紹介いただければ幸いです。
今後とも地域の先生方と連携しながら、より良い医療の提供に努めてまいります。何卒よろしくお願い申し上げます。