日本大学病院では、保険適応された11C‐メチオニン(MET)が稼働しています
腫瘍と正常脳の境界は不明瞭で、腫瘍の細胞は正常な脳にしみこんでいるため、神経症状を悪化させずにできるだけ多く腫瘍を切除するためには病巣の広がりを把握することが治療方針決定の上できわめて重要です。
メチオニンPETによって神経膠腫の病巣の範囲を正確に知ることができます。脳腫瘍の治療前評価や、化学療法中の効果判定、さらに放射線治療後の壊死か再発かの判定に有用です。
メチオニンPETは脳腫瘍の治療経過中の評価にも有用で、再発の有無を適切に評価することができます。MRIで病変が明らかでない病変をメチオニンPETで指摘できることもあります。
他の画像診断では見分けづらい放射性壊死などの部位と腫瘍を鑑別出来るため、放射線治療(ガンマナイフなど)の治療計画や、治療方針の決定に有用です。
造影MRI、CTと比べ腫瘍の範囲を適切に評価しえ、腫瘍再発と放射線壊死の鑑別にも優れるとされる検査です。
膠芽腫(悪性グリオーマ)の治療
原発性脳腫瘍である神経膠腫には星細胞腫、乏突起神経膠腫、上衣腫などの種類があり脳から発生する腫瘍のおよそ25%を占めており臨床的にはすべて悪性脳腫瘍に分類されます。
グレード4に分類される膠芽腫は悪性度が高く、とくに悪性神経膠腫は通常画像で見える範囲よりはるかに広い範囲に早期から腫瘍細胞が進展しています。
グレード4の腫瘍は、腫瘍が大きくなるスピードが速く、周りの正常な脳にしみ込むように発育し(浸潤性発育)、腫瘍と正常な脳の境界が不明瞭です。
膠芽腫は、予後が不良な腫瘍の一つで60歳前後に多く発生します。
膠芽腫に対して手術、化学療法、放射線治療などのさまざまな治療を行ったとしても、予後が悪い理由は、膠芽腫の腫瘍細胞は、増殖するスピードが非常に早いこと(高い増殖能)と脳に染み込むように進展し、正常な脳と腫瘍の境界がはっきりしない(破壊性浸潤)ことにあります。
膠芽腫に対する治療は、手術による最大限の腫瘍摘出と化学療法(内服)および放射線治療が治療の骨格です。手術での腫瘍摘出率が高ければ高いほど生存期間、予後が良好になるとされています。
手術後に化学療法及び放射線治療を、退院後に外来で、維持療法として化学療法薬を内服しますが、膠芽腫の予後は極めて不良であり、様々な治療が試みられています。
中枢神経系悪性リンパ腫は高齢者に多くみられ近年増加傾向です。
膠芽腫手術症例
手術前
手術後
日本大学病院では、脳腫瘍や手術が難しいとされる頭蓋底疾患治療に安全な医療の提供で積極的に取り組んでいます。