関節鏡視下前十字靭帯再建術の変遷
-トップアスリートから、70歳越えのスポーツ愛好家まで-
当科では、私が入局した20数年前から、スポーツ医学研究班(スポーツ外来)のドクターにより、すでに非常に多くの前十字靭帯再建術の症例がありました。整形外科以外の専門の先生方も、スポーツニュースなどでACL損傷やその手術を受けた選手の話を聞いたことがあるかもしれません。前十字靭帯を損傷してしまうと、レベルの高いスポーツへの完全復帰までは6-12か月を要する非常に重篤な怪我の一つです。
当時は、概ねハイレベルなアスリートでなければ受けなくてよいとICがなされていた記憶があります。一般の人は必要ない。といった雰囲気でありました。しかし最近では、ACL損傷に続発して生じる二次的な半月板損傷や、軟骨損傷、変形性関節症などを予防するためにも手術を受けておきたいという患者さんや、70歳を超えるスポーツ愛好家(テニス、スキー、ウインドサーフィン)の方が、私の人生の生きがいを奪わないで欲しいというような熱意で外来に来られます。実際に、高校生のころにACLを切ってしまい、その後、半月板損傷を発症し半月板切除を受けて、現在40代なのに、変形性関節症の痛みで困っている患者さんもスポーツ外来ではよくみられます。一方、70歳を超えて手術を受けられて(やる側としては、術中、術後、移植組織の質の問題、骨密度の問題、術後の拘縮や筋力の回復など、本当に心配してしまうのですが)、“イヤー先生~。膝が安定して、ほんとうに気持ちよくウインドサーフィンができるようになって、本当に手術受けてよかったですわ!ハッハッハッー”とおっしゃっている方もいて、ホッとするというか唖然とするというか、隔世の感があります。
当科では成績向上のため、常に術式の欠点を改善させる努力を行ってきました。移植組織も、腸脛靭帯、腸脛靭帯+人工靭帯、半腱様筋腱、骨付き膝蓋腱へと変化しており(半腱様筋腱、骨付き膝蓋腱は現在どちらも行っています)、また術式も、Over the top方式、Single のIn side out法(経脛骨骨孔法⇒経前方ポータル式)、Double bundle方式のIn side out法 ⇒ Out side in法、骨孔の位置も、顆間窩の直上いわゆる11時から9時方向へ、さらにもっと前方向、いやもっと後方に。現在は骨孔の形を丸ではなくより正常の解剖に近づけるため楕円にするなど、本当に多くの変更点を加えてきております。20年前と比較すると、本当に高度で緻密な手術に変化しました。特にDouble方式に変えた時には、なんて難しい手術なんだと感じたものですが、今は初めて指導される先生も場合によりその術式からスタートするなんてこともあります(指導者側は本当に気を使います)。
その都度、この変更に意味はあるのか?大変なだけじゃないのか?と自問自答してまいりました。しかし明日のACL再建術の予定患者さんを、20数年前の術式で行おうなんて、解剖構造学的にも、バイオメカ的にも、臨床成績的にも思うことは全くありません。
もしこの先にさらに大きな変化があるようであれば、術者側としては大変なので、優秀な後輩外科医がスポーツ研究班には育っておりますので、その役割を委譲して私は手術を隠居したいと決心しております。
医療関係者の方へ
ニュースレター