残暑厳しき折から、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。
今年になり米国糖尿病学会は、糖尿病網膜症診療の新たな指針がDiabetes Care(2017; 40: 412-418)に発表しました。同学会による指針の改訂は2002年以来、15年ぶりだそうです。そこで今回は糖尿病網膜症について少しお話させて頂きます。
糖尿病治療には様々な新薬が登場し、その治療は進歩しています。しかし、いまだに重症な糖尿病網膜症患者は後を絶ちません。先日のニュースレターに同封しました『治験のお知らせ』のように黄斑浮腫のない糖尿病網膜症に対しても抗VEGF薬の適応を拡大しようとする動きがあります。実際、新しい治療指針では増殖糖尿病網膜症(PDR)治療には汎網膜光凝固(PRP)と抗VEGF薬硝子体内注射と記載されています。PRPに勝る有効性としては視野、視力、白内障進行防止の点が挙げられています。日本でもPDR治療にPRPよりも抗VEGF薬硝子体内注射がメインになる日も近いのかも知れません。確かに抗VEGF薬硝子体内注射は糖尿病黄斑浮腫のみでなくPDRにおいても強力な治療手段となることは間違いありません。しかし、患者は抗VEGF治療を受け続ける必要があり、治療を自己中断すれば血管新生緑内障になる危険性を孕んでいます。高額な薬価も問題であり、患者の経済的負担は大きく、また医療費に占める抗VEGF薬は現在の年間800億円からさらに増加することでしょう。
医師側の問題もあります。当科では毎日40件以上の注射を2人の医師が分担し注射しています。単純な手技とはいえ、感染症予防や水晶体損傷などに細心の注意が必要であり、肉体的、精神的負担は増加しています。
抗VEGF薬硝子体内注射とPRPを組み合わせ、患者、国、医師の3者に負担の少なく、かつ患者の視機能を良好に維持できる最適な方法を今から考える必要があると考えています。
当科では、糖尿病網膜症においては服部医師、北川医師、金子医師が主に担当しておりますのでご紹介の程、宜しくお願い致します。