乳腺内分泌外科 コラム第1弾【今、注目を集めている乳房同時再建とは】
乳がんの手術と言えば、今までは、腫瘍のサイズが小さければ腫瘍の周囲の乳腺を少しつけて切除する部分切除と、乳房を全部切除してしまう乳房全摘がありました。部分切除では切除する乳腺が少ないので、傷口も小さく乳房のボリュームも残せます。しかし、腫瘍が大きかったり、腫瘍が乳頭に近かったり、広範囲に腫瘍が広がっているときは、残念ですが、片方の乳房がなくなってしまう乳房全摘を選択せざるを得ませんでした。このような現状のなか、一筋の光がさすことになったのです。それは、忘れもしない2013年7月です!乳癌全摘後の人工乳房再建術の一部が保険適応となったのです!今までは、乳房を全部切除してしまうと、手術後に乳房を失う喪失感を味わなければならなかったのが、乳房同時再建が出来ることにより解決出来るのです。「乳房同時再建ってすごい、保険が通って良かったな~。でも乳房同時再建ってよく知らない」そう思いますよね。それでは今から説明しますね。
【乳房再建とは】
乳房再建とは乳がんの手術で失ったり、変形したりした乳房を新しく作り直すもう1つの手術です。乳房再建の方法には、手術を行うタイミングや術式によって、いくつかあるのですが、今回は当院で行っている人工物を使用しての一次二期再建をお話しします。まず、初回の手術で乳房を全摘します、それと同時に切除された乳房の代わりにテッシュエキスパンダーという生理食塩水のバッグを留置してきます。その後、退院後に外来で、テッシュエキスパンダーに生理食塩水を注入し、徐々に乳房をもとの大きさに膨らませます。初回手術から6カ月~1年後にテッシュエキスパンダーをシリコンインプラントに交換する2回目の手術を施行します。
【症例提示】
言葉だけで説明しても、かなり分かりづらいので、当院での症例を提示します。この患者さまは当院で乳房全摘+乳房同時再建を施行し、最後に乳輪乳頭再建をアートメイクで施行しました。再建後には『先生、こんなに綺麗に乳房を再建してもらえて本当に感謝してます。もう、来月に友達と温泉に行く約束したんです』と言われた時には感無量でした。今後も、乳腺疾患でお困りの方がいらっしゃいましたら、ご相談下さい。