日本大学病院消化器内科外来医長の山本です。
新病院になってからもうすぐ2年が経とうとしています。移転の際には先生方に多大なるご迷惑をおかけし申し訳ございませんでした。移転後も先生方から変わらぬご支援を頂き、お蔭様で外来受診患者数、入院患者数ともに増加傾向となってきました。
これからも地域社会に貢献し続ける病院として、日々の診療を大切にしながら努力してまいりますので、引き続き先生方の変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。
新しいC型肝炎の治療
C型肝炎ウイルスは1989年に米国のChooらによって発見されました。現在全世界では1億7000万人、日本では150-200万人が感染しているとされています。C型肝炎ウイルスの感染例の約70%は慢性肝炎へと移行し、慢性肝炎になると炎症の持続により肝線維化が起こり肝硬変へと進展し、また肝癌の合併が1年で7-8%の頻度で起こるとされています。C型肝炎の治療目標は、HCVの持続感染による慢性肝疾患の長期予後の改善、それに伴う肝発癌や肝硬変への進展による肝関連死を抑制することにあります。そのため1992年以降、わが国ではインターフェロンを中心とした治療が盛んに行われ、インターフェロンで治療することで肝炎の沈静化や肝発癌が抑制されることが明らかになりました。しかしながら、インターフェロンはウイルスのタイプが1型のものや、ウイルスの変異の型、患者さんのインターフェロンの感受性などの因子によって治療効果が乏しいことがあることも解明されました。また高齢者、肝硬変、うつ病などの患者さんではインターフェロン治療が適さないため治療が出来ない(インターフェロン不適格)という問題もありました。しかしウイルス治療の進歩は目覚しいものがあり、2014年7月にインターフェロンを用いない直接作用型抗ウイルス薬(Direct Acting Antivirals:DAA)である、プロテアーゼ阻害剤(アスナプレビル)とNS5A阻害剤(ダクラタスビル)の併用療法が承認されました。それまで抗ウイルス療法が困難であったインターフェロン不適格や、インターフェロンでの治療を失敗した患者さんに対する、まったく新しい治療が可能となったのです。その後も第二世代のDAAが認可されていますが、どの薬剤も90%を超える良好な治療成績といわれています。その一方で非代償性肝硬変の患者さんや、併存疾患のためDAAを用いた治療が出来ない患者さん、DAAでも治療が失敗された患者さんたちの治療は難しい状況が続きますが、肝庇護療法で少しでも炎症を抑え、次の治療法が開発されるまで「あきらめない」医療を粘り強く行う必要があります。
終わりに
C型肝炎の治療は大きなブレイクスルーがありましたが、肝疾患まだまだはよく分からないものや、非アルコール性脂肪性肝炎のように有効な治療法のないものもたくさんあり、外来で困ることもよくあります。我々は、先生方からお気軽にご相談いただける外来を目指しています。お困りの問題を解決できないこともあると思いますが、共有できるだけでも大変光栄です。ご相談を楽しみにお待ちしています。