2014年10月に日本大学病院が開院して、早いもので2度目の春を迎えることになりました。4月からは私たち消化器内科に新たに3人の新入職者を迎えることとなり、気持ちも新たに、全員で日々の診療にあたっていきたいと思います。今後とも変わらぬご支援、ご指導のほどお願い申し上げます。
悪性消化管閉塞に対する大腸ステント留置術
悪性消化管閉塞に対する金属ステント留置術は近年幅広く施行されています。大腸癌による消化管閉塞には以前は人工肛門増設が第一選択の治療でしたが、2012年に大腸ステントが保険適応となったことにより、内視鏡的大腸ステント留置術も一つの治療選択肢になっています。
ステント留置は透視下で内視鏡を用いて行います。内視鏡を閉塞部位まで進め、閉塞部位で造影検査を行い、狭窄部の長さや屈曲を確認した後、閉塞部の奥にガイドワイヤーを誘導します。ガイドワイヤーに添う形でステントを挿入し留置します。留置後2-3日以内にステントは完全拡張し、合併症がなければ留置後翌日からの食事再開が可能です。留置成功率は高く、ほぼ9割を超えるとされています。
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図1 大腸ステント (ボストンサイエンティフイック社より引用) |
大腸ステント留置術の多くは、全身状態が不良の終末期のがん患者さんで外科手術に耐えられないと判断された際に行われます。ステント留置により、腹部膨満感や嘔吐などといった自覚症状は著明に改善することが示されており、以前であれば手術不可能の消化管閉塞で食事摂取不可能となり、入院加療を余儀なくされていた方が、ステント留置によって食事が取れるようになったことで、退院できるようになり、在宅医療を取り入れながら自宅で過ごす時間を持つことも出来るようになります。患者さんの生活の質(QOL)を改善するという面からも、非常に有用な治療法であるといえます。
同時に、この処置自体は手術前の減圧目的に行われることもあり,(Bridge to Surgery)その場合は術前にステントを留置した群と、ステント挿入でなく緊急手術をした群とで比較をした場合、ステント留置群が術後の合併症が少なかったとする報告もあります。
大腸ステント留置術については、術中、術後の穿孔、逸脱、再閉塞などの合併症があり、さらに肛門に近い直腸の癌や、屈曲の強い部位などの腫瘍では留置が不可能な場合もあります。処置の前には腫瘍の場所や長さを確認してから、安全に処置をすることが求められます。患者さんにとって負担の少ないステント留置術を、より安全に行うことで、より多くのがん患者さんのQOLを改善することが出来る、非常に有用な治療法であると考えています。当院でも大腸ステントをはじめ、胃、十二指腸などの悪性腫瘍に対してもステント留置を行っています。以前であれば、高齢、全身状態不良であるといった理由で、治療が難しいとされていた患者さんに対しても処置が可能なこともありますので、お悩みの患者さんがいましたら、ご相談下さい。
通常、上部下部消化管内視鏡検査は外来で行いますが、自宅が遠い、下剤の内服が不安である等といった場合には入院での内視鏡検査も可能となっています。また、内視鏡検査の際に、患者さんの苦痛やストレスを減らすために、鎮静剤を使用しての‘負担の少ない内視鏡検査‘にも積極的に対応しています。検査に対する不安を少しでも減らすよう、医師、看護師で協力して取り組んでいます。検査はしたいけれども、恐怖感があり、つい先延ばしにしてしまう・・・などといった声は、外来でも多く聞かれます。皆様のご希望に添えるようにスタッフ一同、努力していきたいと思います。いつでもご相談ください。