11月1日より日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科教授を拝命いたしました後藤田卓志と申します。多方面で活躍する卒業生を数多く輩出する大学の教授職に任命された責任の重さに身の引きしまる思いでおります。今回のニュースレターでは、私個人の紹介と、皆様に変わらぬご支援のお願いをさせて頂きたく存じます。
私は、1992年に東京医科大学を卒業し、1995年からの15年間を国立がんセンターで消化管癌に対する診断と内視鏡治療に対する臨床研究に従事してきました。特に、早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の科学的根拠と技術的な礎を築けたことに誇りを感じております。ESDは従来の内視鏡的粘膜切除術(EMR)とは根本的に異なる技術で、切除可能な病変サイズが飛躍的に大きくなりました(図1)。
その後は、この技術の普及活動を国内のみならず海外でも行い(図2)、2006 年からは保険収載となり国内なら誰でも受けられる手技となりました。ESD の登場によって早期胃がんの相当数が内視鏡にて切除される時代となりました。胃がんの原因はピロリ菌感染であることは WHO の報告でも明らかになっています。よって、まずはピロリ菌感染の有無を知り、陽性者には除菌療法が望ましいと考えられています(胃がんの予防効果については除菌した年齢にもよりますがある程度の効果があると報告されています)。さらに、胃がんの早期発見には定期的な検診(胃X線検査および胃内視鏡検査)が望ましく、早期発見された病変に対しては ESD による低侵襲治療がなされることになります。
ただし、ESD は内視鏡を用いて(この場合の内視鏡とは外科でいう腹腔鏡とは異なりいわゆる胃カメラのことです)、胃の内側からがんのみの切除しかできません。つまり、早期胃がんでもリンパ節転移の可能性がある病変は切除の対象とはなりません。では、ESD で治る早期胃がんと手術が必要な早期胃がんをどうやって見分けるのでしょうか?これは、ESD の技術以上に知識と経験が必要になりますし、最終的には組織診断でしか判明しない場合もあります。これらの基準は、日本胃癌学会による「胃癌治療ガイドライン」に明記されており、我々は本ガイドラインを熟知した上で個々の症例において適切に評価・検討していくことが求められています。最終的には、様々な判断の下で患者様やご家族の希望にも十分に耳を傾け最も適した治療を一緒に考えて決めていく必要があります。近隣の先生方におかれましては、早期胃がん症例への治療依頼のみならずピロリ検査や除菌療法や消化器一般の患者様への対応の準備も整っておりますので、様々なニーズに当科をお役立ていただければと存じます。ご紹介の際には、医療連携室にお電話いただければ、それぞれに専門領域担当医の外来予約をさせていただきます。また、外来を経ずに内視鏡・超音波などの検査予約のみのオーダーもお受けしております。なお、先生方の施設で先生ご自身が結果説明を行えるよう、検査報告を速やかにお送りさせていただくよう対応しております。是非ともご活用いただければ幸いです。