浅春の候、皆様におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。
今回は胃癌の手術治療についてお話しさせていただきます。
胃癌は近年、やや減少傾向にあり、生活習慣の変化に伴うヘリコバクターピロリ菌の感染率の低下が主な要因と言われております。ただし、依然として日本人の胃癌の罹患率は肺癌に続いて2番目に高く、必要十分な治療体制を提供する必要があります。
さて、胃癌の治療では内視鏡治療、手術治療、抗がん剤治療などそれぞれの治療法において、この10年で様々な進歩がありました。その中で今回は手術治療において解説させていただきます。
胃癌治療の主となるものは、今も昔も手術が基本です。現状では一部の早期胃癌を除き、ほとんどのステージにおいて手術が第一選択となっておりますが、最近の大きな変化としては腹腔鏡手術の普及があります。1991年に本邦で初めて導入されて以来、現在では多くの施設で行われるようになってきました。腹腔鏡手術によって、整容性や低侵襲に加えて、拡大視効果による精緻な手術ができるようになりました。一昨年前に肝切除に対する
腹腔鏡手術が大きな社会問題となりましたが、胃癌の腹腔鏡手術は既に保険収載されており、エビデンス的にも安全性が担保されております。また現在は進行胃癌に対しても適応が可能かどうか、臨床試験が行われているところであります。
日本大学病院では2005年に本格導入して以来、多くの手術症例を経験してきました。前述の臨床試験にも参加しております。手術は日本内視鏡外科学会の技術認定医が行い、より安全で確実な手術を提供できるものと考えております。
また通常の幽門側胃切除術(下2/3の胃切除)だけでなく、胃全摘や噴門部胃切除(上2/3の胃切除)にも腹腔鏡手術を行っており、胃癌の状態によって、患者様により適した術式を提供させていただいております。
当院では個々の病態に応じて適切な治療方法を選択しておりますが、紹介していただく場合に「いったい胃癌を内科と外科のどちらに紹介していいのか?」と迷われるかもしれません。でも、安心してください。当院では消化器内科、消化器外科のどちらにご紹介いただいても、まず胃癌を専門とする内科医と外科医が週に一度カンファレンスを行い、その週に紹介していただいた全て患者様を確認し、内視鏡治療、手術治療、抗がん剤治療のどの治療法が適切かを合同で決定しております。また、そのような体制の構築により手術治療が必要な場合は外科受診時より2~3週間以内での手術を実現しております。
紹介していただけるすべての患者様に、最先端の医療を提供できるように日々精進しております。今後ともよろしくお願い申し上げます。