日本大学病院消化器内科専修医の武井章矩と申します。昨年4月に2年ぶりに出張病院より戻り、外来と病棟診療を担当させていただいております。今回のニュースレターでは当院でも導入しました経口胆道鏡(Spy Glass DS)について紹介いたします。
経口胆道鏡
食道や胃、大腸といった消化管領域では内視鏡による直接観察や直視下生検はすでに確立したものとなっております。一方胆管や膵管は狭い内腔と十二指腸乳頭に開口するなどの解剖学的な特徴から現在でも病変診断の中心はCTやMRCP、ERCPによる直接胆道造影と透視下生検となっております。しかし胆管狭窄の良悪性の鑑別や胆管癌の水平方向進展度診断には苦慮する症例もしばしば遭遇します。経口胆道鏡は胆管や膵管の内腔を詳細に観察し、直視下で生検も行えるために診断感度の上昇に寄与するものとなっております。
経口胆道鏡の胆管内への挿入と観察について
経口胆道鏡(Spy Glass DS)は十二指腸鏡(親スコープ)を介して頚乳頭的に細径の経口胆道鏡(子スコープ)を直接胆管や膵管に挿入し内腔を観察する検査法です。挿入前に内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)を中切開以上行います。また必要に応じて内視鏡的乳頭バルーン拡張術を行う場合もあります。経口胆道鏡を乳頭の胆管口から挿入します。経口胆道鏡では生理食塩水の送水と吸引が可能なために適宜、送水と吸引を行い洗浄しながらクリアな画像を保ち、胆管内を観察します。狭窄部位によっても異なりますが一般的には肝門部胆管まで経口胆道鏡を挿入し引き抜きながら胆管内を観察します。経口胆道鏡は4方向にアングル操作が可能なために、観察時には基本的には経口胆道鏡のスコープ操作で管腔や病変をとらえるようにします。生検が必要な際にはSpy Biteという専用の生検鉗子を用いて直視下生検が可能となっております。一般的な内視鏡の生検鉗子に比べると小さい生検鉗子ですが診断に十分な検体量を採取することができます。
当院では悪性胆管狭窄が疑われるが診断に苦慮する症例だけでなく総胆管結石、閉塞性黄疸など迅速に診断や治療が必要な患者様がいらっしゃいましたら医療連携室を通してお気軽にご相談ください。迅速に対応させていただきます。今後ともよろしくお願いいたします。
経口胆道鏡の画像:不整な血管と隆起性病変を認める
生検鉗子(Spy Bite)4.2mmのカップサイズで検体を採取します