私は当循環器病センターにおいて、循環器疾患のみならず、高血圧や腎臓病の方を多く担当しております。今回は腎臓病診療についてご紹介します。
最近、慢性腎臓病と心血管疾患が密接に関連することが知られるようになり、「心腎連関」と呼ばれています。
腎臓が悪くなると体液貯留を生じて心不全になり、反対に心臓が悪くなれば、腎血流が低下して腎機能が悪化します。そこには神経体液性因子や酸化ストレスなどが複雑に絡み、内皮機能障害から動脈硬化をも生じます。
実際、透析導入に至った患者さんの半数以上が、その時点で既に虚血性心疾患を合併しています。日本人は3人に1人が高血圧で、6人に1人が慢性腎臓病といわれており、さらに高齢化が進んでいることから、潜在的な心血管疾患患者さんが多く存在します。
疾病の多くは早期発見早期治療が望ましいわけですが、我々が拝見している慢性腎臓病や心血管疾患も同様です。慢性腎臓病の病診連携のポイントは、①血清クレアチニン値の上昇、②尿蛋白と尿潜血ですが、より早期に対応するためには③微量アルブミン尿の出現、④難治性高血圧でのご紹介が好ましいかもしれません。最近、このような事例での紹介が増え、糸球体腎炎の診断・治療に至った例や原発性アルドステロン症など二次性高血圧の診断に至った例もあります。軽症例では数ヶ月~半年毎に当院でも経過観察し、紹介医に検査結果をフィードバックすることで患者さんにも大変満足頂けております。
また、当院の腎生検数は例年15件前後ですが、紹介患者さんの増加により今年は上半期だけで既に11件に達しております。IgA腎症に対しては扁摘パルス療法を行っており、2014年10月の新病院開設以降の寛解率は100%と治療成績も良好です。
透析導入数は例年20-25件ですが、今年は上半期だけで既に16件と増えております。最近では腹膜透析の導入にも力を注いでおり、今年は上半期だけで既に7件に達しております。
血液透析に関しては、慢性維持透析患者さんが抱えるかゆみや心不全に対して有効と思われるオンラインHDFを中心に、個々の患者さんの病態に適した血液浄化を行っております。
慢性腎臓病患者さんは心血管疾患の合併が多い反面、造影剤の使用制限があり精査加療に難渋しますが、当院では腎毒性のないMRIや心臓核医学検査などを用いて精査し、血管内治療を行う場合も炭酸ガス造影や超音波検査を併用するなどして造影剤使用を少なくする努力をしております。
慢性維持透析患者さんに対しても、各科と連携し診療にあたっているのはもちろんのこと、循環器内科医が透析管理を行っている強みを活かして、心血管疾患のスクリーニングや治療にあたっております。例えば、重症下肢虚血患者さんにおいて、フットケアにより局所処置をしつつ循環器内科による血管内治療や心臓血管外科によるバイパス手術を行い、さらには透析室でLDLアフェレーシスを行うなどしております。
日々の診療において腎機能が少しでも悪化した症例や尿検査異常、難治性高血圧の患者さんがおりましたら、火・水曜日の外来までご紹介頂ければ幸いです。