昨年5月より脳神経外科を担当しております須磨です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回は急速な勢いで高齢化社会が進行していることで発症が増加している脳卒中の最近の話題を提供させていただきます。
平成30年12月10日、国会最終日に「健康寿命の延伸などを図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病係る対策に関する基本法」が成立いたしました。この法律は脳卒中や循環器病(心臓病)が、我が国の死亡原因や要介護の主な原因となっていることから、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間、すなわち健康寿命を延伸するため、様々な対策を総合的かつ計画的に推進することを目的に制定されたものです。法律の制定によって ①脳卒中・循環器病を予防のための継続的・全国的な市民啓発 ②超急性期脳梗塞・心筋梗塞における閉塞血管に対する再開通療法の普及 ③新しい治療法の開発 ④要介護者の減少による医療費・介護費の削減などが推進されます。したがって今後は脳卒中を発症された急性期の患者さんは内科治療・血管内治療・手術療法を迅速に対応可能で、リハビリテーションを早期より導入できる医療機関に益々集約されることになると予想されます。
近年脳卒中、特に脳梗塞は発症してから治療までの時間を少しでも短くすることが治療成績の向上に寄与するとのデータが数多く発表されております。当科においても以前より救命救急科、麻酔科、リハビリテーション科などと連携しながら治療成績を向上させるため急性期の脳梗塞治療に対して、rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法や血管内治療による血栓回収術を、脳出血に対しては神経内視鏡を用いた低侵襲な脳内血腫除去術を導入し、神経機能回復のため脳卒中発症早期よりのリハビリテーションを推進して参りました。さらに2名の日本脳血管内治療学会専門医が、侵襲の少ない頸動脈ステント留置術や脳動脈瘤塞栓術を積極的に行なっております。血管内治療は年々増加傾向で昨年の当院での症例数は33件でした。また当院には3名の脳卒中学会専門医が在籍しておりますが、昨年、脳卒中を専門とする若手医師を養成するため内科と協力し日本脳卒中学会教育研修施設を取得いたしました。
一方、高齢化社会の問題となっている認知症ですが、脳卒中が原因であることが多く、脳卒中の予防、再発予防が認知症を防ぐためにも極めて重要です。脳卒中の原因である高血圧や糖尿病など生活習慣病の管理のためには内科や循環器科などとの連携が不可欠です。
脳卒中患者さんは高齢の方や様々な疾患を抱えていることが多く、単独の医療機関、診療科だけでは対応が難しいことをしばしば経験いたします。脳神経外科としても日頃お世話になっている医療機関の皆さま方とも病病、病診連携を進めていきたいと思いますので、何卒よろしくお願いいたします。