網膜色素上皮裂孔の治験と臨床研究のご案内
常々、先生方の貴重な患者様を多数ご紹介下さりありがとうございます。
さて、日本大学病院アイセンターでは、これまで多くの滲出型加齢黄斑変性に対して抗VEGF注射を行ってきました。その抗VEGF注射において避けたい合併症が、網膜色素上皮裂孔です。図のように網膜色素上皮裂孔が生じ、網膜色素上皮欠損部位が中心窩近傍に及ぶと不可逆性の高度な視力低下をきたします。これまで、網膜色素上皮裂孔が生じた場合は、治療方法もなく経過観察しかありませんでした。しかし、この度、網膜色素上皮裂孔を有する患者を対象にしたヒトiPS細胞由来網膜色素上皮細胞の治験(jRCT2073230077)に参加することになりました。これは、正常な機能を持つiPS細胞由来の網膜色素上皮細胞を網膜色素上皮欠損部位ならびに周辺に移植し、視細胞との層構造の回復及び視機能の維持又回復を目的とした治験になります。先生方の加齢黄斑変性の患者様で網膜色素上皮裂孔を発症したあるいは、網膜色素上皮剥離を伴う脈絡膜新生血管で網膜色素上皮裂孔のハイリスクとなる症例がございましたら当院へご紹介ください。
また、これまでに網膜色素上皮裂孔を発症した患者様については、その網膜色素上皮欠損部位の網膜感度等の推移に関する自然観察研究を行っております(臨床審査委員会承認番号20240602)。このデータは、今後、上記の治療をどの時点までに行うのが良いのかなどを判定できる貴重な情報となります。
このような臨床研究ができるのも、日頃先生方から多数の患者様をご紹介頂いているおかげです。深く感謝申し上げます。
日本大学病院アイセンターのスタッフ一同は、先生方との病診連携を強化し、先生方の大切な患者様を迅速に、丁寧に診断及び治療をさせて頂きます。今後も宜しくお願い致します。