ロービジョン患者さんの読書速度評価について
秋の心地よい風が吹く時期となりました。平素より多くの患者様をご紹介頂きありがとうございます。
日本大学病院アイセンターでは、ロービジョンケアを視機能訓練士が中心となり積極的に行っております。日常診療で、近見視力低下で文字情報利用における困難を訴える患者さんは多いですが、視力検査から読書時の困難を推定するのは難しいです。実際に矯正視力が(0.4)程度あっても、読書時の困難を感じている患者さんは多いようです。アイセンターではMNREAD-J™を用いて読書評価を行っています(図1)。MNREAD-J™では、段階的に小さくなる文章を患者様に音読してもらうことで、最も速く読める文字のサイズを検出することができます。そして、検査結果はルーペなどのエイド選定等に利用することができます。MNREAD-J™で検出される数値は、その人の読書能力で最も速く読むことができる最小文字サイズの臨界文字サイズ(critical print size ;CPS)、読みやすい大きさの文字で1分間に読める文字数(maximum reading speed ; MRS)、やっと読むことができる文字サイズの読書視力(Reading Acuity ; RA)があります。読書視力は視力値と同等になることが多いです。(図2)なるべく小さい視標まで答えてもらう視力検査から、すらすら読むという課題に対する解決法を推定すると、少なく見積もってしまうことが解ります。やっと読めるということと、実用的な読みには隔たりがあります。患者さんが楽にスピードを出して読むことができる文字の必要倍率算出には、臨界文字サイズと読みたい文章の文字サイズの比を計算します。例えば、22ポイントが臨界文字サイズの患者様では、11ポイントの書類をすらすら読みたいのであれば、22÷11=2倍の倍率が必要になります。30㎝の距離でMNREAD-J™を行ったのであれば、30㎝の屈折値である3.3Dを2倍した6.6D程度のルーペをまず試用してみます。特に、これまでの眼鏡では見えにくい患者様に喜んで頂いております。
日本大学病院アイセンターでは疾患の治療は素より、患者様の日常のご不自由にも寄り添ってまいります。ロービジョンケアをご希望の患者様がいらっしゃいましたら、紹介状にその旨お書き添えの上、まずは診察の予約をお取りください。
今後も変わらぬご高配を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。