反回神経麻痺の治療につきまして
今回のニュースレターでは、喉頭の神経疾患の代表である反回神経麻痺について説明し、当科の音声喉頭外来での取り組みの一部についてご紹介いたします。
反回神経麻痺は、声帯を動かす筋肉を支配する反回神経が損傷されることで、声帯の片側または両側が正常に動かなくなる状態です。主な原因としては、甲状腺手術や胸部外科手術における神経損傷、腫瘍の圧迫、ウイルス感染などが挙げられます。片側麻痺では、声のかすれや飲み込みにくさ、呼吸困難が生じることがあり、両側麻痺の場合は、特に呼吸困難が重篤になりやすいです。
診断は、喉頭ファイバースコープを用いた視覚的評価でなされ、原因の特定のため超音波やCT検査が行われます。治療には、保存的療法と外科的療法があります。保存的療法では、言語聴覚士による声帯機能の代償を意図したリハビリテーションを行うことがあります。手術が必要な場合には、声帯を補強して声質を改善する甲状軟骨形成術や、麻痺した声帯を移動させる声帯内転術(披裂軟骨内転術)などがあります。ごく軽症の片側麻痺であれば、声帯注入術で対応することもあります。また、両側麻痺では気道確保のために気管切開術が必要になることもあります。気管切開孔からの呼吸であっても、発声可能なカニューレを使用し、会話が可能です。さらに、気管切開孔を閉鎖することを患者さんがご希望の場合は、声門レベルでの気道狭窄を声帯外方移動術で改善し、そのご希望をかなえます。
反回神経麻痺は患者のQOLに大きく影響するため、適切な診断と治療法の選択が重要です。一般的には、手術後の片側麻痺が最も頻度が高く、麻痺発症後6ヶ月ほどで自然治癒することが経験されます。しかし、回復が認められない場合は、何らかの治療が必要です。当科では、診断はもちろん、前述した治療の豊富な経験に基づきいずれの術式にも対応が可能です。
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