大動脈弁狭窄に対する経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)の再開
当院では昨年6月から大動脈弁狭窄に対する経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)を再開いたしました。大動脈弁狭窄症とは、大動脈弁が狭くなり、血液の流れが制限される病態です。この病気は通常、高齢者に多く見られ症状が進行することで心不全や心停止を引き起こす可能性があります。これまでは、大動脈弁を手術で置換する「開心術」が主な治療法でしたが、高齢者や重篤な合併症がある患者にはリスクが伴います。そのため、近年では「経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)」が注目されています。TAVIは、カテーテルを使って血管から大動脈弁を置換する方法で、開心術に比べて侵襲が少なく、回復が早いという利点があります。TAVIの最大の特徴は、胸を切開せずにカテーテルを使って弁を挿入する点です。これにより、手術後の回復が早く、入院期間も短縮されます。TAVIの手順は、まず、足の動脈や首の動脈などからカテーテルを挿入し、そこから新しい弁を送達します。新しい弁は、狭くなった大動脈弁の上に配置され、圧力で押し広げられてしっかりと固定されます。この手術は全身麻酔を使用し、通常は数時間で完了します。術後は数日間の入院が必要ですが、開心術に比べて体への負担が少ないため、高齢者でも安全に行えることが多いです。
TAVIは、特に以下の患者に適応されます:
1. 高齢で手術リスクが高い患者
2. 合併症を持つ患者(例:慢性疾患がある、心機能が低下しているなど)
3. 開心術が難しいまたは不可能な患者
また、TAVIの成績は非常に良好で、術後の死亡率や合併症の発生率も低く、生活の質が改善することが多いとされています。しかし、すべての患者に適応できるわけではなく、個々の症例に応じて治療法を決定する必要があります。当院では循環器内科、心臓血管外科によるハートチームで患者さん一人一人の状態を協議し、手術も合同で行っております。また、術後は心臓リハビリを1週間ほど行うことで退院後も安心して生活を送っていただいております。大動脈弁狭窄症は軽度なものでは症状が現れにくく、他の病気の検査などで見つかる場合がほとんどです。重症になってから発見されることも多く、重症になると狭心症(胸の痛み)、失神、心不全症状(息切れなど)が現れ、治療を行わないと予後不良です。 一般的な生命予後は、狭心症が現れると5年、失神が現れると3年、そして心不全の場合は2年といわれており、突然死の危険性を伴います。息切れや心雑音でお困りの患者様がいらっしゃいましたら大動脈弁狭窄症を含む循環器疾患の可能性があります。お困りの際は当院へご紹介、受診相談をご検討ください。