前立腺肥大症に対する新しい低侵襲手術
2025年1月から日本大学病院泌尿器科で前立腺肥大症にたいする新しい低侵襲手術を始めましたので御紹介いたします。現在まで当科ではレーザー前立腺核出術などの低侵襲手術を手がけて参りましたが、今回導入したRezūm(レジューム)システムはさらに侵襲度が低く、10分程度の手術時間で完遂いたします。概要は、内視鏡を用いて尿道から入り(経尿道的)、高温水蒸気を利用して前立腺肥大症を治療する医療機器です。高温水蒸気が肥大した組織内に蔓延して細胞を壊し体内に自然に吸収されていくことで症状を緩和します。
Rezūmシステムは図1です。このうち、デリバリーデバイスという細長い筒状の部分が体内に入る部分になります。
腰椎麻酔や全身麻酔など必要に応じた麻酔の方法が麻酔科の先生方の判断により考慮されます。抗凝固薬はいまのところ中止またはヘパリン置換で行っています。麻酔後砕石位でデリバリーデバイスを尿道より入れ、先端から水蒸気を送り出す針を出し、肥大組織に直接差し込み水蒸気を注入します。水蒸気は前立腺組織の間質を伝って充満します。約103℃ですが、前立腺は体温と同じですので水蒸気治療を行った部分が約70℃になります。この過程で治療部分の前立腺細胞は破壊され、その後約1~3か月かけて自然に体内に吸収されていきます。こうして、肥大していた前立腺が小さくなり、前立腺肥大症からくる下部尿路症状が緩和されます。治療方法を簡単に示すと図2になります。この治療は、側葉肥大に対しても中葉肥大に対しても行うことができます。
治療後尿道浮腫が起こるので、尿閉にならないために治療後一定期間、膀胱カテーテルを留置します。留置期間の平均は3.4日間で範囲は1.0 – 30.9日間です。術前から膀胱カテーテルが留置されている場合はこれより長くなります。合併症には排尿障害の残存、肉眼的血尿、血精液症、頻尿、尿意切迫などがあります。軽度なものまで含めても、排尿障害が約17%、血尿が約11%、それ以外は10%以下で、保存療法で回復するものがほとんどです。
御希望の患者さんがおられましたら是非御紹介をお願いいたします。
図1
図2